・・・頭の中でつきつめたことの独白――もう一人の自分に向っての。そういう風ね。私は自分の全生活の波、色、響をあなたのところへ一つものこさずつたえて、それでくるんであげたい。むきになって仕事をしているときのつめよせた調子までも。一貫した生活のトーン・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・ヒューマニズムの文学というような豊かで範囲も広い筈の提唱が起っているのに、まさにその時、文芸評論はその理論性を失って独白化し随筆化して来ていることが注目されたというのは当時の日本文学のどういう悲喜劇であったろうか。 この時期ナンセンスな・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
・・・夜も眠らない稲草人の前に、一つ一つくりひろげられる貧しい農家の老婆が害虫と闘い生活と闘う姿や、飲んだくれの夫に売られることを歎いて、投身して死ぬ漁婦の独白は読者の心魂に刻み込まれて消すことの出来ないリアリティーをもって描かれている。 そ・・・ 宮本百合子 「春桃」
・・・ とよび、夜の露台で有名な独白を月、星、夜鶯にかけて訴えたろう。しかし、ジュリエットが現実に出来たことは死ぬことしかなかった。デスデモーナが、まばゆいほど白くて美しい額の奥に、オセロを出しぬくだけの生一本な正直さもしんのつよい情熱ももたなか・・・ 宮本百合子 「デスデモーナのハンカチーフ」
・・・の初日に滝沢氏の演じられた弟の独白の場面で、舞台の一隅に置かれた枝蝋燭立てから一本の燃えているローソクが舞台の上に落ちました。そこは貴族の室内である。弟は陰険奸悪な陰謀者である。彼は一人で室内を行きつ戻りつしながら、古典劇らしく自身の悪計を・・・ 宮本百合子 「一つの感想」
出典:青空文庫