・・・ 芝居気のねえ野郎だな」と独言ちて、若衆は次の盤台を洗い出す。 しばらくするとまた、「こう三公」「何だね? 為さん」「そら、こないだお上さんのとこへ訪ねて来た男があるだろう……」「為さんはまたお上さんのことばっかり言ってるね・・・ 小栗風葉 「深川女房」
・・・大阪の人らしい茶目気や芝居気も現れている。近代将棋の合理的な理論よりも我流の融通無碍を信じ、それに頼り、それに憑かれるより外に自分を生かす道を知らなかった人の業のあらわれである。自己の才能の可能性を無限大に信じた人の自信の声を放ってのた打ち・・・ 織田作之助 「勝負師」
・・・ 十一 荒馬スモーキー この映画も監督は馬に芝居をさせているつもりでいるが、馬のほうでは、あたりまえのことながら、ちっとも芝居気はなくて始終真剣だから、そう思ってこの馬のヒーローを見ていると実に愉快である。子馬が生ま・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(3[#「3」はローマ数字、1-13-23])」
・・・たとえ興行者のほうでは芝居のつもりであったとしても、動物のほうでは芝居気などは少しもない正真正銘の命がけの果たし合いだからである。 ジャングルの住民は虎でも蛇でもなんでもみんな生きるために生まれて来ているはずである。ところが、それが生き・・・ 寺田寅彦 「映画「マルガ」に現われた動物の闘争」
・・・そこに不自然があり無理がある。そこに芝居気が生ずる。」 学校の職務について苦労のない事はなかった。学校にありがちな大小の事件のために彼の健康には荷の勝った辛労もあったようである。そういう時にどんな態度でどんな処置をとったかは全く私にはわ・・・ 寺田寅彦 「亮の追憶」
出典:青空文庫