・・・のやり場を両肩におッかぶせられて餓死しないのがむしろ不思議な農民の生活、合法無産政党を以て労農提携の問題をごま化し去ろうとする社会民主主義者共の偽まんを突破して真に階級性を持った提携に向って進んでいる貧農大衆の闘争等については、まだ全くわれ・・・ 黒島伝治 「農民文学の問題」
・・・日清戦争に際して、背後の労働者階級と貧農がどんな風であったかは、この「愛弟通信」から求められ得ないが、国際的な関係の現れとしての北支那海に於ける英仏独露の軍艦の浮游が報じられてある。独歩は、それについて何等の説明も附してはいないし、或は気が・・・ 黒島伝治 「明治の戦争文学」
・・・山崎のお母さんに比らべると、お前の母は小学校にも行ったことがないし、小さい時から野良に出て働かせられたし、土方部屋のトロッコに乗って働いたこともある純粋の貧農だったが、貧乏人であればあるほど、一方では自分の息子だけは立派に育てゝ楽をしたいと・・・ 小林多喜二 「母たち」
・・・ 私は、無智の、食うや食わずの貧農の子孫である。私の家が多少でも青森県下に、名を知られはじめたのは、曾祖父惣助の時代からであった。その頃、れいの多額納税の貴族院議員有資格者は、一県に四五人くらいのものであったらしい。曾祖父は、そのひとり・・・ 太宰治 「苦悩の年鑑」
・・・は集団農場組織=農村における五ヵ年計画と、都会の工場との結合、貧農の機械化に対する自発性を取り扱っている点なかなか面白いが、一つ重大な誤謬を持っている。それは、集団農場組織にさいして都会から派遣されてきた指導者とそこの富農とが階級的分裂をす・・・ 宮本百合子 「インターナショナルとともに」
・・・ダイジェストがアンケートを送った電話・自動車所有者名簿には、数百万の失業者、もっと多数の半失業者、貧農とその妻たちその娘たちの名はのっていなかった。しかし、これらの名簿から消されながら生きているアメリカの、現実の有権者たちは、いくらかでもま・・・ 宮本百合子 「現代史の蝶つがい」
・・・農村、都会とも、小学校はギリシア正教の僧侶に管理された。貧農、雇女の子供は中学にさえ入れなかった。猶太人を或る大学では拒絶した。「十月」は、翻る赤旗とともに、すべてこういうプロレタリア、農民への重石をはねのけ、猛然と文盲撲滅をはじめた。・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェト同盟の文化的飛躍」
・・・ 五ヵ年計画実現の或る政策、特に集団農場化のような場合、はじめはグズグズ疑りぶかく、反動的に小さい自分一身の利害の勘定ばっかりしていた貧農、中農が、やがて農民としての損得から云っても集団化された方が得であることを合点し、仲間の中からの活・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・七年から十二年の星霜を経て、その深刻な根本的改変と建設との成果に立って、社会主義生産の段階に到達し、生産の全面と文化の全部門から利潤追求の企業性を排除しえたとき、国内的に勤労階級と有識人階級との対立、貧農と富農との対立が消えたと認められたこ・・・ 宮本百合子 「作家の経験」
・・・程ケ谷の紡績工場から故郷のその村に向って汽車にのっているヨシノとサダ子につれられて、二人の娘の気質の相異を理解しながら、読者は次第に北国へ向い、やがて峯子に出会ってA村に入ると、そこには、貧農の息子でのちに急進的に行動する清司、動揺する地方・・・ 宮本百合子 「作家への課題」
出典:青空文庫