出典:青空文庫
・・・「誰れが来ていたんです?」「少佐。」「何?」二人とも言葉を知らなかった。「マイヨールです。」「何だろう。マイヨールって。」松木と武石とは顔を見合わした。「振い寄ると解釈すりゃ、ダンスでもする奴かな。」 七・・・ 黒島伝治 「渦巻ける烏の群」
・・・芸術のほうでもマチスの絵やマイヨールの彫刻にはどこかにわれわれの俳諧がある。これがドイツへはいると、たちまちに器械化数学化した鉄筋式リアリズムになるのが妙である。 ヒアガルの絵のように一幅の画面に一見ほとんど雑然といろいろなものを気違い・・・ 寺田寅彦 「連句雑俎」
・・・ 佐多稲子さんのところに、何年も前からマイヨールの「とげ」という小さい彫像があった。マイヨール独特の親しみぶかいふっくらした裸婦が足にささった小さなとげをとろうとしているところである。その彫像が久しぶりで訪ねた鷺の宮の家のたんすの上に飾・・・ 宮本百合子 「さしえ」