・・・ 雑誌社は罹災し、その上、社の重役の間に資本の事でごたごたが起ったとやらで、社は解散になり、夫はたちまち失業者という事になりましたが、しかし、永年雑誌社に勤めて、その方面で知合いのお方たちがたくさんございますので、そのうちの有力らしいお・・・ 太宰治 「おさん」
・・・唐桟、角帯、紺の腹掛、白線の制帽、白手袋、もはや収拾つかないごたごたの満艦飾です。そんな不思議な時代が、人間一生のあいだに、一時は在るものではないでしょうか。なんだか、まるで夢中なのです。持ち物全部を身につけなければ、気がすまぬのです。カシ・・・ 太宰治 「おしゃれ童子」
・・・それならば、殿様が勝ち、家来が負けるというのは当然の事で、後でごたごたの起るべき筈は無いのであるが、やっぱり、大きい惨事が起ってしまった。殿様が、御自分の腕前に確乎不動の自信を持っていたならば、なんの異変も起らず、すべてが平和であったのかも・・・ 太宰治 「水仙」
・・・ 一方、女どもの言い争いは、いつまでもごたごた続いている。 私は立上って、帰ると言った。 お篠は、送ると言った、私たちは、どやどやと玄関に出た。あ、ちょっと、と言って、私は飛鳥の如く奥の部屋に引返し、ぎょろりと凄くあたりを見廻し・・・ 太宰治 「チャンス」
・・・いう事になったわけで、さて、それに就いてまたもあれこれ考えてみたら、どうもそれは、自作に対する思わせぶりな宣伝のようなものになりはしないか、これは誰しも私と同意見に違いないが、いったいあの自作に対してごたごたと手前味噌を並べるのは、ろくでも・・・ 太宰治 「鉄面皮」
・・・右の一隅には、何かごたごた置かれてあった。 時間の経っていくのなどはもうかれにはわからなくなった。軍医が来てくれればいいと思ったが、それを続けて考える暇はなかった。新しい苦痛が増した。 床近く蟋蟀が鳴いていた。苦痛に悶えながら、「あ・・・ 田山花袋 「一兵卒」
・・・これは自分のようなテンポののろい頭には少しごたごたしすぎているような気がした。ただ錯雑した混乱のあらしの中に、時々瞬間的に映出される白馬のたてがみを炎のように振り乱した顔の大写しは「怒り」の象徴としてかなりに強い効果をもっていたようである。・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
・・・のようなものに比べると、どうしても少しごたごたした感じのするのはやむを得ない。 しかしこの映画はまたまさにそういう点から見て、未来の音映画の進化の径路を暗示するものと思われる。この映画の傾向を次第に発展させて行けば結局は日本固有の俳諧連・・・ 寺田寅彦 「音楽的映画としての「ラヴ・ミ・トゥナイト」」
・・・尤も大井愛といったような姓名だと Oo I Ai で少し短かすぎ、また Ty So Ga Be Ta R Za E Mon では少しごたごたし過ぎるかもしれない。但し、漢字でかくのと大した変りはない。それにしても日本の学者の論文が外国に紹介・・・ 寺田寅彦 「KからQまで」
・・・限られた紙幅の中に規定されただけの項目を盛り込まなければならないという必要からではあろうが、実にごたごたとよく色々のことが鮨詰になっている。一頁の中に三つも四つもの器械の絵があったりする。見ただけで頭がくらくらしそうである。そうしてそれらの・・・ 寺田寅彦 「マーカス・ショーとレビュー式教育」
出典:青空文庫