・・・弁護士や、ポルジイと金銭上の取引をしたもの共が、参考に呼び出される。プラハとウィインとの間を、幾人かの尼君達が旅行せられる。実際鉄道庁で、この線路の列車の往復を一時増加しようかと評議をした位である。無論急行で、一等車ばかりを聯結しようと云う・・・ 著:ダビットヤーコプ・ユリウス 訳:森鴎外 「世界漫遊」
・・・尤も彼のような根本的に新しい仕事に参考になる文献の数は比較的極めて少数である事は当然である。いわゆるオーソリティは彼自身の頭蓋骨以外にはどこにも居ないのである。 彼の日常生活はおそらく質素なものであろう。学者の中に折々見受けるような金銭・・・ 寺田寅彦 「アインシュタイン」
・・・それで、これも不思議な錯覚の一例として後日の参考のためについでに書添えておくこととする。 寺田寅彦 「ある探偵事件」
・・・ 学校教育やいわゆる参考書によって授けられる知識は、いろいろの点で旅行案内記や、名所の案内者から得る知識に似たところがある。 もし学校のようなありがたい施設がなくて、そしてただ全くの独学で現代文化の蔵している広大な知識の林に分け入り・・・ 寺田寅彦 「案内者」
・・・幸いだと思って、「オイ、三公、義公」と呼んだら、二人は変装している自分を、知ってか知らずにか、振り返って近づいて来た、と、二人は「宮本利平だ!」と、冷たく云い放って、踵を返してバタバタ逃げ出してしまった。奴らは見張をしていたのだ。生意気に「・・・ 徳永直 「眼」
・・・皆愛スベキナリ。山行伐木ノ声、渓行水車ノ声並ニ遠ク聴クベシ。遊舫ノ笙、漁浦ノ笛モ遠ケレバ自ラ韻アリ。寺鐘、城鼓モ遠ケレバマタ趣キナキニアラズ。蛙声ノ枕ニ近クシテ喧聒ニ堪ヘザルガ如キモ、隔ツレバ則チ聴クベシ。大声モト聴クニ悪シ。林ヲ隔ツレバ則・・・ 永井荷風 「向嶋」
・・・テニソンの『アイジルス』は優麗都雅の点において古今の雄篇たるのみならず性格の描写においても十九世紀の人間を古代の舞台に躍らせるようなかきぶりであるから、かかる短篇を草するには大に参考すべき長詩であるはいうまでもない。元来なら記憶を新たにする・・・ 夏目漱石 「薤露行」
・・・と心配だから参考のため聞いて置く気になる。「どうしてって、別段の事情もないのだが――それだから君のも注意せんといかんと云うのさ」「本当だね」と余は満腹の真面目をこの四文字に籠めて、津田君の眼の中を熱心に覗き込んだ。津田君はまだ寒い顔・・・ 夏目漱石 「琴のそら音」
・・・民法の親族編など参考にして説を定む可し。 右第一より七に至るまで種々の文句はあれども、詰る処婦人の権力を取縮めて運動を不自由にし、男子をして随意に妻を去るの余地を得せしめたるものと言うの外なし。然るに女大学は古来女子社会の宝書と崇められ・・・ 福沢諭吉 「女大学評論」
・・・昨日の紙上に掲載したる女大学評論の第五回中新民法の事に論及したる所あるを以て、聊か其次第を記して読者の参考に供すと言う。 福沢諭吉 「新女大学」
出典:青空文庫