・・・戦後、続出した新興出版事業者は、ほとんど例外なしに、この敗戦おきみやげたる紙の操作によって出発した。これらの事実については火野葦平のみならず、軍と「民間」との消息に通じた多くの人がもとより無智であろうはずはなかった。 まったく、「バクロ・・・ 宮本百合子 「しかし昔にはかえらない」
・・・昭和のはじめに簇出した『文芸時代』『近代生活』『文芸都市』その他は、資本主義の社会の生活と文学の中で個人的な展開を試みなければならなかった人々の同人雑誌であった。したがって、それらの人々の文学上の流派が――新感覚派にしろ、新心理主義にしろ、・・・ 宮本百合子 「しかし昔にはかえらない」
・・・ ところで、知識人をこめた一般の読者は上述のような幾種類かの何々文学の続出に対して果して満足していただろうか。知識人は生産文学が示したような人間生活と精神の単純化には、何と云っても耐え得ないものを持っている。何かの理想を求め、主張をたず・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
・・・その困難を打ちひらいて、若い時代にふさわしい希望と生活にうち向う気力を鼓舞しようとする意気組から、これらのおびただしい恋愛論は簇出したのであったろうか。 前後して、日本のインテリゲンツィアの間には青年論がとりあげられていた。青年が、現代・・・ 宮本百合子 「若き世代への恋愛論」
出典:青空文庫