・・・又戒名は帰命院妙乗日進大姉である。僕はその癖僕の実父の命日や戒名を覚えていない。それは多分十一の僕には命日や戒名を覚えることも誇りの一つだった為であろう。二 僕は一人の姉を持っている。しかしこれは病身ながらも二人の子供の母に・・・ 芥川竜之介 「点鬼簿」
・・・夫婦の間に子なき其原因は、男子に在るか女子に在るか、是れは生理上解剖上精神上病理上の問題にして、今日進歩の医学も尚お未だ其真実を断ずるに由なし。夫婦同居して子なき婦人が偶然に再縁して子を産むことあり。多婬の男子が妾など幾人も召使いながら遂に・・・ 福沢諭吉 「女大学評論」
・・・たとえば医学の如きは、日本にてその由来も久しく、したがってその術も他の諸科に超越するものなれども、今日の有様を見れば、西洋の日新を逐うて、つねに及ばざるの嘆をまぬかれず。数百年の久しき、日本にて医学上の新発明ありしを聞かざるのみならず、我が・・・ 福沢諭吉 「学問の独立」
出典:青空文庫