・・・人の言葉が、犬と人との感情交流にどれだけ役立つものか、それが第一の難問である。言葉が役に立たぬとすれば、お互いの素振り、表情を読み取るよりほかにない。しっぽの動きなどは、重大である。けれども、この、しっぽの動きも、注意して見ているとなかなか・・・ 太宰治 「畜犬談」
・・・動物との肉体交流を平気で肯定しているのである。或る英学塾の女生徒が、Lという発音を正確に発音したいばかりに、タングシチュウを一週二回ずつの割合いで食べているという話も亦、この例である。西洋人がLという発音を、あんなに正確に、しかも容易にこな・・・ 太宰治 「女人訓戒」
・・・哀れな小駅であったが、来て見るとまず大きな料理屋兼旅館が並んでいる間にペンキ塗りの安西洋料理屋があったり、川の岸にはいろんな粗末な工場があったり、そして猪苗代湖の水力で起こした電圧幾万幾千ボルトの三相交流が川の高い空をまたいでいるのに驚かさ・・・ 寺田寅彦 「写生紀行」
・・・これに類した問題は液体の交流に関するものである。 現今物理学の研究問題は、分子、原子、エレクトロン、エネルギー素量となって、至るところに混乱系が跳梁している。プロバビリティの問題、エントロピーの時計の用途は存外に広いという事を思い出すに・・・ 寺田寅彦 「時の観念とエントロピーならびにプロバビリティ」
・・・最初にやった実験は、電流計の磁針が交流でふれることに関するものであって、その結果は同年の British Association で報告している。その外の実験は色に関するものや、電気感応と惰性とのアナロジーなどに関するもので、これに関するマ・・・ 寺田寅彦 「レーリー卿(Lord Rayleigh)」
・・・卵のところを離れず、いつもヒレを動かしながら、水をきれいに交流させる。外敵が来ると、これとたたかう。試みに、私は指を水中の卵のところへさし入れてみた。すると、父親ドンコが頭を指にぶっつけて来て押しのけようとする。それでも、なお指を近づけよう・・・ 火野葦平 「ゲテ魚好き」
・・・生活的な面では住んでいるアメリカのプロレタリア大衆とも、故国日本の革命的大衆ともなんら切実な交流を持っていない。ポッツリ切りはなされている亀のチャーリーという男が、ニューヨークには、ほかの日本人労働者も学生も商人もいるであろうのに、それらと・・・ 宮本百合子 「一連の非プロレタリア的作品」
・・・そして、このケーテの内部に交流しているシムボリックな傾向が婦人画家としての彼女に、フライリヒラアツの詩やハウプトマンなどの文学作品から、モティーフを刺戟された題材の版画集を創造させた。しかも芸術作品として彼女のそれらの製作を傑出させているの・・・ 宮本百合子 「ケーテ・コルヴィッツの画業」
・・・ 自分たちでやっている以上、そういう人々が相談して、最も合理的な方法、村と都会との間の生活必需品の交換として、農村生産物と工業生産物との交流を、組織的に円滑にゆくようにしたらば、どうだろうかと考えてみる。すると、その一つが環となって、夥・・・ 宮本百合子 「現実に立って」
・・・一人当り一ヵ年二八円九四銭 第十二工場 製カン、鋳物、ガス溶接屋 二〇九名 第八工場 変圧器製造 六五〇名 第七工場 直流、交流発電キ 電キ機関車 五〇〇 第五工場 小型モーター セン風機・・・ 宮本百合子 「工場労働者の生活について」
出典:青空文庫