・・・金穀の会計より掃除・取次にいたるまで、生徒、読書のかたわらにこれを勤め、教授の権も出納の権も、読書社中の一手にこれをとるがゆえに、社中おのおの自家の思をなし、おのおの自からその裨益を謀て、会計に心を用うること深切なり。その得、二なり。一・・・ 福沢諭吉 「学校の説」
・・・而してその政権はもとより上士に帰することなれば、上士と下士と対するときは、藩法、常に上士に便にして下士に不便ならざるを得ずといえども、金穀会計のことに至ては上士の短所なるを以て、名は役頭または奉行などと称すれども、下役なる下士のために籠絡せ・・・ 福沢諭吉 「旧藩情」
・・・すると所長は私の顔は少しも見ないで、やっぱり新聞を見ながら、「会計へまわって見積旅費を受けとるように。」と一言だけ云いました。 わたくしは叮嚀に礼をして室を出ました。それからその辞令をみんなに一人ずつ見せて挨拶してあるき、おしまいに・・・ 宮沢賢治 「ポラーノの広場」
・・・ 会計の方じゃあ、まあ、おとつあんが居なけりゃあと云われるし、取り締りの方では、恭二が年の割りに立てられて居るんだしするから…… 良吉は、「広告はよせよ、 おい、良い加減にしなきゃあ、兄さんがあてられるぜ。と・・・ 宮本百合子 「栄蔵の死」
・・・コンツェルンの会計係コレイコから、その金を捲き上げようとする。その過程にイリフ、ペトロフは極めてユーモラスで辛辣で明快な調子で、ソヴェト社会の旧い考え旧い生きかたの諷刺を行っている。オスタップ・ベンデル自身の山師としての社会的存在の意義も、・・・ 宮本百合子 「音楽の民族性と諷刺」
・・・――それに友達が来るしね、仕舞いには皆が便宜を計ってくれてね、会計に居た津田なんて男――大胆な、悪賢い人でしたが、随分危険な真似するのよ、津田さんお花見に行きたいんだが金を都合して来て下さい、十五円て云うとね、うん、よしって、社の方へ沢山為・・・ 宮本百合子 「斯ういう気持」
・・・ ○ローゼン迚もおしゃべり――長舌というアダ名 金をふところに抱いてねる、この男、金がたのみで、夫婦の会計は別。妻、亭主にかした金をかえしてくれなくてはいやとケンカをし、フイリッポフのところに逃げて居る。フイリッポフが夫のところ・・・ 宮本百合子 「一九二五年より一九二七年一月まで」
・・・ナロードニキの連中は、パン店の仕事の工合をも考えず、麦粉の代さえのこさず、不規律に会計から金を引出して行った。デレンコフは、明るい髯をむしりながら、痛ましくも薄笑いした。「破産しちまうよ」 デレンコフの生活も亦苦しかった。彼は時々訴・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
・・・リンツマンの檀那と云うのは鞣皮製造所の会計主任で、毎週土曜日には職人にやる給料を持ってここを通るのである。 この檀那に一本お見舞申して、金を捲き上げようと云う料簡で、ツァウォツキイは鉄道の堤の脇にしゃがんでいた。しかしややしばらくしてツ・・・ 著:モルナールフェレンツ 訳:森鴎外 「破落戸の昇天」
出典:青空文庫