・・・ペテンにかけられた雑穀屋をはじめ諸商人は貸金の元金は愚か利子さえ出させる事が出来なかった。 「まだか」、この名は村中に恐怖を播いた。彼れの顔を出す所には人々は姿を隠した。川森さえ疾の昔に仁右衛門の保証を取消して、仁右・・・ 有島武郎 「カインの末裔」
・・・一、私立の塾には元金少なくして、書籍器械を買い塾舎を建つる方便なし。その失、一なり。一、古来、日本にて学者士君子、銭を取りて人に教うるを恥とし、その風をなせるがゆえに、私塾にて些少の受教料を取るも大いに人の耳目を驚かす。かつ大志を抱・・・ 福沢諭吉 「学校の説」
・・・払っても払っても元金は殖えるばかりだ。それはとにかく私は又この前のお方に百四十年前に非常な貸しがあるのでそれをもとでに毎日この人について歩いて実は五十円ずつとっているのだ。マッチの罪とかなんとか一向私はしらない。」と云いながら自分の前の青い・・・ 宮沢賢治 「ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記」
・・・もとは坪百円で建った家が今は二百円かかるという厚生省の意見はもっともだけれど、家というものは三年か四年すれば元金は償還すると常識では私たちに教えている。今回厚生省のきめる家賃は、一つ一つの新建家屋について何年目かには引下げを条件としてのこと・・・ 宮本百合子 「私の感想」
出典:青空文庫