・・・けれども先生の性質が如何にも淡泊で丁寧で、立派な英国風の紳士と極端なボヘミアニズムを合併したような特殊の人格を具えているのに敬服して教授上の苦情をいうものは一人もなかった。 先生の白襯衣を着た所は滅多に見る事が出来なかった。大抵は鼠色の・・・ 夏目漱石 「博士問題とマードック先生と余」
・・・ この放射作用と前に申した分化作用が合併して我以外のものを、単に我以外のものとしておかないで、これにいろいろな名称を与えて互に区別するようになります。例えば感覚的なものと超感覚的なものに分類する。その感覚的なものをまた眼で見る色や形、耳・・・ 夏目漱石 「文芸の哲学的基礎」
・・・欧州にて和蘭、白耳義のごとき小国が、仏独の間に介在して小政府を維持するよりも、大国に合併するこそ安楽なるべけれども、なおその独立を張て動かざるは小国の瘠我慢にして、我慢能く国の栄誉を保つものというべし。 我封建の時代、百万石の大藩に隣し・・・ 福沢諭吉 「瘠我慢の説」
・・・ 文芸欄のある新聞は『都』だけだったので、またとろうとしたら『国民』と合併になって、『東京新聞』という名になっていました。内幸町の新しい船のような白い『都』の建物は中身がどうなっているでしょう。それでも細かく一頁を使って、いくらか特色を・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・で幸徳秋水以下三十余名の人々が検挙され、ファーブルの『昆虫の社会』という本まで社会という字がついていると云って発禁されるような、日本の社会主義弾圧のもとに暴力的な日韓合併が行われた年であった。この一九一〇年にコペンハーゲンで第二インターナシ・・・ 宮本百合子 「婦人デーとひな祭」
一九三八年三月に、ナチス・ドイツはオーストリアを合併し、三九年三月には、チェコとスロヴァキアとを合併した。五月末に独伊軍事同盟が結ばれ、三ヵ月のちの八月には独ソ不可侵条約を締結した。ヒトラーの政府はラジオをもってこのことを・・・ 宮本百合子 「私の信条」
・・・さて今既に印刷し畢っているファウスト考には、右の第一部、第二部の正誤表を合併して、更に訂正を加えて添えてあるのである。六 正誤表に載せてある誤には、誤植もあれば、誤写もある。原稿は私の書いたのを、筆工に写させた。それが印刷所・・・ 森鴎外 「不苦心談」
・・・とをに合併すれば、大体は四つの部分になる。『甲陽軍鑑』がこれらの部分において語っていることは、非常に多種多様であるが、しかしそれを貫いて一つの道徳的理想が動いているように思われる。軍法の巻においてさえも、その主要な関心は、戦術や戦略の末・・・ 和辻哲郎 「埋もれた日本」
出典:青空文庫