・・・の真意は、勝利者が上から敗北者にあびせかけた笑いであるというよりは、現実社会の腐敗や停滞、偽瞞を裏まで見とおしている社会生活への鋭い洞察者が、その明るくてかげのない実践的な生活態度と遠大な見とおしに立って、周囲の虚偽卑劣を描きつつ、おのずか・・・ 宮本百合子 「音楽の民族性と諷刺」
・・・文学研究員は大衆を、壁新聞と工場新聞に向って動員し、生産経済計画達成に大衆の自発性を鼓舞する文学的実践を自身の文学的勉強とすべきだということになったのだ。 これは、完く正しい。そして「鎌と鎚」工場の文学研究会がこの集会で再組織をしよ・・・ 宮本百合子 「「鎌と鎚」工場の文学研究会」
・・・銭というものの魔術性をあらわにし、それが近代社会を支配する大怪物として蓄積されてゆく過程を明らかにして、人間性の勝利の実質、生産する者が生産を掌握することの自然さを示した社会科学者たちの業績と、それを実践する人々にたいして、その雄々しさと真・・・ 宮本百合子 「現代の主題」
・・・それこそ、プロレタリア的な知慧=無駄のない理論的であるとともに実践的な同時にびっくりするほど国際的な活々した知識をもつようになる。 折角もって生れた才能を押しつぶしたり、歪めたりするような不経済を社会主義社会の教育は決してしない。アメリ・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェト同盟の文化的飛躍」
・・・どんな作家達でも、革命の実践が教えた集団の価値、行動のテンポを自分たちの作品の中へ反映させずにはいられなかった。それは、世界のプロレタリア文学にとって新鮮な、生気あふれる豊富な前進であった。 当時ソヴェト同盟の民衆は、謂わば「俺等のあの・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・この立ちおくれを急速にとりかえし、プロレタリア文学の中に解放運動における婦人大衆の独特な歴史的実践が階級全体の闘争との生々しい連関においてもっともっと隈なく描かれるように、婦人のプロレタリア・農民作家がドシドシ文学サークル員・通信員の中から・・・ 宮本百合子 「国際無産婦人デーに際して」
・・・自然美を十分に味わうべきこと、文芸を心の糧とすべきこと、その文芸も『万葉集』、『源氏物語』のごとき古典に親しむべきこと、連歌や歌の判のことなども心得べきこと、などを説いた後に、実践の問題に立ち入って、人を見る明が何よりも大切であることを教え・・・ 和辻哲郎 「埋もれた日本」
・・・しかし後に現われたものがかなり強く実践的であるに反して、上代のものは特に明瞭に芸術的であった。この密接な芸術と宗教との結合が、偶像崇拝に対してきわめて正当な根拠を与え得るのである。 私は、昔ながらの山野と矮屋とを見慣れた我々の祖先が・・・ 和辻哲郎 「偶像崇拝の心理」
・・・ 観照もまた一つの態度としては実践に属する。それは時にあるいは有閑階級にのみ可能な非実践の実践として、すなわち搾取者の奢侈として特性づけられ得るであろう。あるいはまた怯懦な知識階級の特色としての現実逃避であるとも見られるであろう。しかし・・・ 和辻哲郎 「『青丘雑記』を読む」
・・・のであって、取りかえしのつかない実践的な人格の発動としての「言う」行為なのではない。人が笑いながら「殺すぞ、と言ってみせた」としても、相手は殺意などを感じはしない。しかるに藤村は、作中の人物がまじめに相手に対して言葉によって働きかけている場・・・ 和辻哲郎 「藤村の個性」
出典:青空文庫