・・・もっとも最近における物質表面層の分子状態に関する研究の成果にはかなりに目ざましいものがあるから、遠からず、私の金だらいの場合や靴底の場合に対しても、いくらか満足な解釈が得られるであろうと期待される。しかし私の希望するところはだれか日本人でこ・・・ 寺田寅彦 「日常身辺の物理的諸問題」
・・・ こうして発達した西欧科学の成果を、なんの骨折りもなくそっくり継承した日本人が、もしも日本の自然の特異性を深く認識し自覚した上でこの利器を適当に利用することを学び、そうしてたださえ豊富な天恵をいっそう有利に享有すると同時にわが国に特異な・・・ 寺田寅彦 「日本人の自然観」
・・・これらは科学の成果に仕上げをかける人々である。そうして科学上のピュリタニズムから見て最も尊敬すべき種類の学者である。 しかるにL軸の真上に座する人はもはや科学者ではない。彼らは詩人である。最善の場合において形而上学者であるが最悪の場合に・・・ 寺田寅彦 「ルクレチウスと科学」
・・・科学の成果は箇々の科学者の個性を超越する。しかし一人の科学者の仕事が如何にその人の人格と環境とを鮮明に反映するかを示す好適例の一つを吾々はこのレーリー卿に見るのである。 冒頭に掲げた写真は一九〇一年五十九歳のときのである。マクスウェルと・・・ 寺田寅彦 「レーリー卿(Lord Rayleigh)」
・・・そうしてみた後にわれわれは、事によると、せっかくのその修正の成果が意外にも単調一律なよそ行きの美句の退屈なる連鎖になりおおせたことを発見して茫然自失するようなことになりはしないか。 連句と音楽とのいろいろな並行性を考えるときに、いつも私・・・ 寺田寅彦 「連句雑俎」
・・・今の世間の実際に女子の不身持にして辱を晒す者なきに非ず、毎度聞く所なれども、斯く成果てたる其原因は、父母たる者、又夫たる者が、其女子を深く家の中に閉籠め置かざりしが故なりやと言うに、必ずしも然らず。元来品行の正邪は本人の性質に由り時の事情に・・・ 福沢諭吉 「女大学評論」
・・・すべての人々に訴えるこれらのたたかいの成果におそれて、労働組合、言論機関、芸能人ばかりでなく、教授と学生への思想抑圧、レッド・パージがおこった。文部、法務、特審関係、どこを見てもその指導的地位にいるものは、大学の第何期生かであり先輩である。・・・ 宮本百合子 「新しいアカデミアを」
・・・ 種々のゆがみをもちつつ、献身的な努力でともかく今日まで押しすすめられて来た運動の段階にあって、私たちは大きい成果の上に生きていると思う。 時間的に四五年といえば短かいがその間急速に激化した闘争は、広い範囲で運動内における女の活動家・・・ 宮本百合子 「新しい一夫一婦」
大地は大変旧いものだ。けれども同時に刻々生成をやすめない恒に新鮮なものでもある。 私たちの生活に、社会について自然についていろいろと科学的な成果がゆたかに齎らされるにつれて、旧き大地の新しさや、そこの上に生じてゆく社会・・・ 宮本百合子 「新しき大地」
・・・批判をそのままくりかえし、これらの人々の活動の積極面――プロレタリア文学運動の成果の抹殺が試みられた。それは、客観的には、非民主的諸勢力への加担を結果することである。「一連の非プロレタリア的作品」を思い出させることで、わたしの現在での活動や・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十巻)」
出典:青空文庫