出典:青空文庫
・・・が、二葉亭のこの我儘な気難かし屋は世間普通の手前勝手や肝癪から来るのではなくて、反覆熟慮して考え抜いた結果の我儘であり気難かし屋であったのだ。 二葉亭は一時哲学に耽った事があったが、その哲学の根柢は懐疑で、疑いがあるから哲学がある、疑い・・・ 内田魯庵 「二葉亭追録」
・・・が、きいて頂きたいことがあるのだ、相談にのって頂きたい、力になって貰いたい、と手前勝手な台辞ばかりならべるのは、なんとも恥しい話です。あなたはカジョーに、ぼくの、経歴人物について、きいて下さったかも知れません。が、カジョーは多分、あいつは宣・・・ 太宰治 「虚構の春」
・・・従って往々はなはだしく手前勝手な我田引水と思われそうな所説のあることは、自分でも認められ、そうしてはなはだ苦々しくも、おこがましくも感ずるのであるが、それをあえて修飾することなくそのままに投げ出して一つの「実験ノート」として読者の俎上に供す・・・ 寺田寅彦 「科学と文学」