ある入学試験の成績表について数学の点数と語学の点数の相関を調べてみたことがあった。各受験者のこの二学科の点数をXYとして図面にプロットしてみると、もちろん、点はかなり不規則に散布する。しかしだいたいからいえば、やはり X ・・・ 寺田寅彦 「数学と語学」
・・・いつでも算術の点数が悪いので両親は心配して中学の先生を頼んで夏休み中先生の宅へ習いに行く事になった。宅から先生の所までは四五町もある。宅の裏門を出て小川に沿うて少し行くと村はずれへ出る、そこから先生の家の高い松が近辺の藁屋根や植・・・ 寺田寅彦 「花物語」
・・・学科目に対してもあまり好ききらいはなく、かなり一様の点数を得ていたが、ただ習字だけはどうしても下手であった。これがため習字を課せられているうちは、平均点数の上から成績のほうへも影響したが、上級に進んで、習字を省かれるとともに、成績も確かによ・・・ 寺田寅彦 「わが中学時代の勉強法」
・・・生徒の点数は教師によって定まる。生徒の父兄朋友といえどもこの権利をいかんともする事はできん。学業の成蹟は一に教師の判断に任せて、不平をさしはさまざるのみならず、かえってこれによって彼らの優劣を定めんとしつつある。一般の世間が評家に望むところ・・・ 夏目漱石 「作物の批評」
・・・それでも点数がよかったので、人は存外信用してくれた。自分も世間へ対しては多少得意であった。ただ自分が自分に対すると甚だ気の毒であった。そのうち愚図々々しているうちに、この己れに対する気の毒が凝結し始めて、体のいい往生となった。わるく云えば立・・・ 夏目漱石 「処女作追懐談」
・・・何のために存在の権利を持っているかというと、前にもお話した通り内容実質を内面の生活上経験することができないにもかかわらずどうでも纏めて一括りにしておきたいという念にほかならんので、会社の決算とか学校の点数と同じように表の上で早呑込をする一種・・・ 夏目漱石 「中味と形式」
・・・この四つのうちに、重要の度からして差等の点数をつけて見ろと云われた時に、何人もこれをあえてする事はできないはずと思います。もしあるとすれば答案を調べずに点数をつける乱暴な教員と同じもので、言語道断の不心得であります。ただ吾は時勢の影響を受け・・・ 夏目漱石 「文芸の哲学的基礎」
・・・もとより智能を発育するには、少しは文字の心得もなからざるべからずといえども、今の実際は、ただ文字の一方に偏し、いやしくもよく書を読み字を書く者あれば、これを最上として、試験の点数はもちろん、世の毀誉もまた、これにしたがい、よく難字を解しよく・・・ 福沢諭吉 「文明教育論」
・・・ 第三回プロレタリア美術展は出品点数二百十七。出品画家は百名を越えている。初めに書いたように、おしまいは四辺が暗くなってしまった位だから、こまかく一つ一つについていえない。 彫刻は、うまいもんだ。・・・ 宮本百合子 「プロレタリア美術展を観る」
・・・けれども、小さい子供の真の価値と学課の点数の問題にくいちがいを見て苦しむ若い女先生の心情は読む者に感銘を与えます。こういう軟かく瑞々しい感情をもっている方が、先生として報告文学の要点をのみこんで、記録をつくったらば、意味のあるものが書けそう・・・ 宮本百合子 「ルポルタージュの読後感」
出典:青空文庫