・・・ 今日の社会では、職業的ということと金儲けが眼目ということはほとんど同義語に印象される習慣です。生存競争が全く個人主義的に行われているから、職業的というとき、ひとよりちょっとでも分をよく立ちまわるということがすぐピンと来るような憐れむべ・・・ 宮本百合子 「現実の道」
・・・だから結婚などと申しましても、何も女の幸福ということが眼目ではございませんで、昔からたくさんあるいろいろなお話をお読みになってもわかる通りに、戦国時代の女の人と申しますのは、父や兄という人達が戦略上自分が一番喧嘩しそうな敵へ人質として自分の・・・ 宮本百合子 「幸福の建設」
・・・自分たちを結婚にまで導いてゆくだけの共感、愛情、人生への態度の共通性を眼目として、そういう対手を待ち求めているひとも多い。 更に、職業をもって自活して暮している若い女のひとたちの結婚に対している心持は、相当複雑であると思う。或る人は何か・・・ 宮本百合子 「これから結婚する人の心持」
・・・この論の真の眼目は、生活の現実に立って今日のヒューマニズムが無方向、一般人間論としてはあり得ないこと、リアリズムにしろロマンチシズムにしろ、人間的立場に立つ以上現実批判なしにあり得ないことを警告しつづけて来ている一部の進歩的作家に対する駁論・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・元来は一つの宗教運動で、公衆の前で自分の罪を告白し悔い改めることを眼目としたが、告白の内容は性的なものが多く、オックスフォード大学からの抗議でオックスフォード運動という名前を使うことをやめさせられた。アメリカでもプリンストン大学では、校内で・・・ 宮本百合子 「再武装するのはなにか」
・・・ 依然として、読ませて儲けるのが眼目である出版物は、猛烈な新円獲得の目的もあって、この頃はいわゆる大衆性を得るということを、エロティシズムに集注している傾きがある。 戦争は人間性をころした。ましてや、微風のような異性の間の情味や・・・ 宮本百合子 「商売は道によってかしこし」
・・・ 今日のこういう現象の複雑さでは、つまるところ儲けが眼目で本屋は当りそうな女の本をあさっているのだとばかり単純に云い切れないところがあるだろうと思う。 この頃になって何故そんなに女性の書いた本に注意がひかれているのだろうか。女の書い・・・ 宮本百合子 「女性の書く本」
・・・いわゆる推理小説家にとっては、この事件が他殺か自殺かをはっきりさせて、その原因、手段をときあかすことが眼目だろう。けれども、一人の民主的作家としてわたしは、別な角度からこの事件に感じているところがある。 自殺であるにしろ他殺であるにしろ・・・ 宮本百合子 「「推理小説」」
・・・帝政ロシアの権力は、石油とカスピ海を眼目にこの都市を侵略した。一九一七年には、ペルシアの石油を我ものにしただけでまだ満足しない帝国主義イギリスとその同盟軍とに対して、バクーの労働者は生命を賭して戦った。石油が真に住民の富源となったのは、全く・・・ 宮本百合子 「石油の都バクーへ」
・・・しかしながら、われわれがなおこれをとりあげ吟味するのは、これらの作家たちの作品を機械的にプロレタリア文学の立前と照らし合わせてそれが非現実的な、主観的作品だときめつけるのが眼目なのではなくて、われわれが生き、たたかい、そしてそれを芸術のうち・・・ 宮本百合子 「一九三四年度におけるブルジョア文学の動向」
出典:青空文庫