・・・の七十回本『水滸伝』を難じて、『水滸』の豪傑がもし方臘を伐って宋朝に功を立てる後談がなかったら、『水滸伝』はただの山賊物語となってしまうと論じた筆法をそのまま適用すると、『八犬伝』も八犬具足で終って両管領との大戦争に及ばなかったらやはりただ・・・ 内田魯庵 「八犬伝談余」
・・・家柄ではあり、親父の余威はあり、二度も京都管領になったその政元が魔法修行者だった。政元は生れない前から魔法に縁があったのだから仕方がない。はじめ勝元は彼だけの地位に立っていても、不幸にして子がなかった。そこでその頃の人だから、神仏に祈願を籠・・・ 幸田露伴 「魔法修行者」
・・・此頃は上は大将軍や管領から、下は庶民に至るまで、哀れな鳥や獣となったものが何程有ったことだったろう。 此処は当時明や朝鮮や南海との公然または秘密の交通貿易の要衝で大富有の地であった泉州堺の、町外れというのでは無いが物静かなところである。・・・ 幸田露伴 「雪たたき」
出典:青空文庫