出典:青空文庫
・・・多くの人は一見乾燥なように見える抽象的系統の中に花鳥風月の美しさとは、少し種類のちがった、もう少し歯ごたえのある美しさを、把握しないまでも少なくも瞥見する事ができるだろうと思う。 寺田寅彦 「相対性原理側面観」
・・・しかし俳句ではたとえ形式の上からは自分の感情を直写しているようでも、そこではやはり、その自分の感情が花鳥風月と同様な一つの対象となっていて、それを別の観察者としての別の自分が観察し記録し描写しているように感ぜられるものが多い。こういう意味で・・・ 寺田寅彦 「俳諧瑣談」
・・・しかし俳句が短歌とちがうと思われる点は、上にも述べたように花鳥風月と合体した作者自身をもう一段高い地位に立った第二の自分が客観し認識しているようなところがある。「山路来て何やらゆかしすみれ草」でも、すみれと人とが互いにゆかしがっているのを傍・・・ 寺田寅彦 「俳句の精神」