・・・そういう意味の強いて名づければ芸術の一般性を土台とした鼓舞が、プロレタリア文学運動が作家に課題として来た諸実践、創作方法を発展せしめるための努力、芸術評価の規準の客観的な確立等に対立するものとして、強調されたのであった。 文芸復興の呼声・・・ 宮本百合子 「今日の文学の鳥瞰図」
・・・バルザックに還れと叫ぶ人々が、バルザックへ戻る前に既にそれをかみこなす自分らの歯を我から不要のものとして抜きすて去っているとしたら、そもそも何の規準によってこの一箇の巨大な古典を摂取し得るであろう。畢竟バルザックは当時一風潮としてきざしはじ・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・芭蕉の風流というものの規準が極端に小さい経済的基礎の上に立っていることは、意味ふかいことである。芭蕉は、小舎の柱に一つの瓢箪をつるし、そのなかに入れた米とそのほかほんの僅かの現世的経済の基礎を必要としただけで、権力のための闘いからも、金銭の・・・ 宮本百合子 「女性の歴史」
・・・文学のひろびろとした発展のために無規準な地方色の偏重は不健全におちいるのであるが、その地方の生産に結びついている大衆の文学的欲求とその表現とがより潤沢に包括されればされるほど、その雑誌は文学の中に地方の現実の着実な観察を反映するものとなって・・・ 宮本百合子 「新年号の『文学評論』その他」
・・・ インフレーションはとめどがなくて、千八百円ベースは、現実の生活で規準にも何にもならなくなって来た。そこで、春さむい三月下旬のいま、新しく二千九百二十円の水準に向って、全勤労階級が種々な方法でその新給与の実現をもとめている。二千九百二十・・・ 宮本百合子 「正義の花の環」
・・・エレンブルグは、その気質、年齢、外国生活のながい経験などによって、アメリカの社会生活と自分との関係を一定の規準で設定する技術をもっている。コンスタンチン・シーモノフは旺盛な三十歳という年齢、彼の感性的な素質、経験の追求、観察の追求における作・・・ 宮本百合子 「政治と作家の現実」
・・・の中で語られているいい生活の規準は、テニス・コートもある洋風の家と丈夫で従順な妻と丈夫なほどよい数の子供達に基礎をおいているのだが、文学の本来は、そのような一個の男の欲求の肯定から出発した設計の描写ではなくて、現代の常識が何故そのような図取・・・ 宮本百合子 「生態の流行」
・・・プロレタリア文学運動における同伴者的作家というものを、先に述べた規準によって正当に理解しないならば、この戦争と革命とへの時期において、日本のプロレタリア文学運動を、敵の前に武装解除させるところの、明らかな右翼的逸脱への危険を示すものとなるで・・・ 宮本百合子 「前進のために」
・・・戸坂氏は、それによっていろいろな作品批評をもさらに批判し得る大きい客観的規準をもった文明批評の出現の要求を意味しているのである。 また、七月の『文学評論』の巻頭言には、「批評における図式主義の再発を防ぐ」という論文があって私の興味をひい・・・ 宮本百合子 「近頃の感想」
・・・が、所謂批評家の注意をひかぬ以前から、すでに大衆的な支持を得ていたというような事実が、文学作品の批評の規準の問題にも触れて多くを暗示するのである。 我々の周囲では、昨今、批評に規準または指導性がありやなしやということなどが論ぜられている・・・ 宮本百合子 「近頃の話題」
出典:青空文庫