・・・また例えば山伏の橙汁の炙出しと見当をつけてから、それを検証するために検査実験を行って詐術を実証観破するのも同様である。「十夜の半弓」「善悪ふたつの取物」「人の刃物を出しおくれ」などにも同じような筆法が見られる。 また一方で、彼の探偵物に・・・ 寺田寅彦 「西鶴と科学」
・・・そして実は彼の敵であった階級の詐術にかかり、最後にはその安定を強化するための思想的代弁人の地位にさえずり込んだ悲劇の担い手としての不屈な姿を今日に示しているのである。 しかもバルザックが遭遇したような歴史的めぐり合わせは、資本主義による・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
・・・しかし彼を翻弄した上流人の生活詐術、十九世紀の金力と結びつき権力と結びついた新聞人の無良心的な関係、手形交換に際して行われる金融の魔術――アングレークにおけるプティクローがリュシアンに対してとる態度――を描くときバルザックは殆ど淋漓たる筆力・・・ 宮本百合子 「バルザックについてのノート」
出典:青空文庫