・・・二・二六事件の秘史というものが、当時の内部関係者であったファシスト軍人によって主観的に合理化してかかれたものが公表されるし、日本海軍潰滅前後の物語も、当時の連合艦隊参謀長というような人々によって執筆されはじめた。 これらの記録には、どれ・・・ 宮本百合子 「ことの真実」
・・・どんな慙愧の念をもって、昨年十月初旬、治維法の撤廃された事実を見、初めて公表された日本支配権力の兇暴に面をうたれたことだろう。 民主的な社会生活の根本には、人権の尊重という基底が横わっている。人権尊重ということは、正当な思想を抑圧して小・・・ 宮本百合子 「今日の生命」
・・・ この法案は日本のラジオの自由と健全な発展を期するために立案されたものであるとして公表された。しかし一般にこの法案が日本のラジオの民主化と自由な発展のために果して適当な性格をもっているかどうかということについてきびしい批判がおこっている・・・ 宮本百合子 「今日の日本の文化問題」
・・・の帆を順風に孕ませた宝船、文芸懇話会というものの文学に対する性質の矛盾は、この一九三五年七月、文芸懇話会賞が与えられた直後、授賞者決定に当って審査員の投票では島木健作氏が選に入っていたにもかかわらず、公表されない特別の理由から室生犀星氏と取・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・致等は、主人公の良心の表現においても、当時の文壇的風潮をなしていた行為性、逆流の中に突立つ身構えへの憧憬、ニイチェ的な孤高、心理追求、ドストイェフスキー的なるもの等の趣向に一縷接したところを含み、その好評に於ても、プロレタリア文学の成長の道・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・片山哲が首相であった時、一般都民が高い都民税に苦しんだ頃、同氏の税額が公表されたことがあった。それは東京都民として最低の額であった。MRAのお客となることは、懐のいたまない、気分のいいことかもしれないが、そのかわり、それだけの恥もひそめられ・・・ 宮本百合子 「再武装するのはなにか」
・・・という小説は好評を博した。『人民文庫』は昨年の初めごろ急に廃刊されたが、そのことのうちにも、歴史の響きがこもっていた。 作家として「石狩川」をまとめて命を終られたことは或る意味で本懐であったであろう。けれども平林氏の死にしろ本庄氏の・・・ 宮本百合子 「作家の死」
・・・ 母親であるひとの言葉によれば、富美子は生理的に不幸な欠陥をもった婦人であり、自殺の動機もそのことと、相場に大失敗したこととに在るように公表された。もし一人の女が、金にこそ不自由ないが、そのような生理的欠陥を体にもって二十八歳まで生きて・・・ 宮本百合子 「昨今の話題を」
・・・しかも彼が敢てこの紀行文を公表するのは、上述のような人類的な確信と共に、虚偽に固執することは却って敵の攻撃に絶好の機会を与えるものであるという現実生活における経験及び「真理は、たとえ痛々しいものであっても、癒すためにしか傷つけないものである・・・ 宮本百合子 「ジイドとそのソヴェト旅行記」
・・・に対する余りの好評が、却ってその好評の本質への疑問を誘う機縁となったことは興味がある。「ひかげの花」に於ける永井荷風の人生への態度は、このようにして生きる一組の男女もある、と云うことの巧な描写に止っている。作品を貫いて流れているものは荷風年・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
出典:青空文庫