・・・私は聞いていて、膝がしびれてかなりの苦痛を味い、かぜをひいたような気持になったが、病身の兄は、一向に平気で、さらに所望し、後正夢と蘭蝶を語ってもらい、それがすんでから、皆は応接間のほうに席を移し、その時に兄は、「こんな時代ですから、田舎・・・ 太宰治 「庭」
・・・ わが国の地震学者や気象学者は従来かかる国難を予想してしばしば当局と国民とに警告を与えたはずであるが、当局は目前の政務に追われ、国民はその日の生活にせわしくて、そうした忠言に耳をかす暇がなかったように見える。誠に遺憾なことである。 ・・・ 寺田寅彦 「天災と国防」
・・・ 財政の一方より論ずれば、常式の官職もなきものへ毎年若干の金をあたうるは不経済にも似たれども、常式の官員とて必ずしも事実今日の政務に忙わしくする者のみに非ず。政府中に散官なるものありて、その散官の中には学者も少なからず。 たとい、あ・・・ 福沢諭吉 「学問の独立」
・・・ そういう社会をお互に一日も早くつくりたいと、私もペンを武器とし仲間とともに働いているわけですが、K子の例でもわかるとおり、そういう自分が××株式会社の重役とかその弟とか、従弟とかというもの=柳瀬正夢の漫画の人物、所謂アミーになろうとは・・・ 宮本百合子 「ゴルフ・パンツははいていまい」
・・・その翌日になると、彼の政務の執行力は、論理のままに異常な果断を猛々しく現すのが常であった。それは丁度、彼の猛烈な活力が昨夜の頑癬に復讐しているかのようであった。 そうして、彼は伊太利を征服し、西班牙を牽制し、エジプトへ突入し、オーストリ・・・ 横光利一 「ナポレオンと田虫」
出典:青空文庫