・・・大学の自由は失われ、学内の統一を乱すという口実で、若い進歩的な哲学者たちは大学から追放されはじめた。政府御用の神学者シェリング等が筆頭となって、考え研究する能力ある人々を追いはらった。カールはこの状況のもとで大学教授を思いすてた。文筆人とし・・・ 宮本百合子 「カール・マルクスとその夫人」
・・・もしかりに、漠然と公安を乱すおそれがある出版物はとりしまるというような新取締法をつくったならば、政府はよろこび勇んで、政府を批判し彼らの良心を眼覚めさすすべての出版物を禁止しはじめるであろう。情報局が戦時中すべての戦争反対の言論を禁止したよ・・・ 宮本百合子 「今日の日本の文化問題」
・・・互に為すべきことを明に弁え、正しく賢く着々と生活を運転させることが彼等の理想であって、理由のない遠慮で仕事も遅らせたり、過度な感情に沈湎して頭を乱すようなことは、見識のない無知として斥けずにはいられないことなのです。 生きた例として、私・・・ 宮本百合子 「男女交際より家庭生活へ」
・・・いい一つのことをするには悪いことと闘っていかなければならないとおり、平和を守る場合には、必ず、平和を乱すあらゆる条件に対して、はっきりとその本質を見きわめ、理性的に聰明につよく闘っていかなければ平和は守れない。 文学的創作は一つの社会的・・・ 宮本百合子 「平和運動と文学者」
・・・彼の職務は或る作品がいかなる芸術的価値を持つかを定めることではなく、ただそれが公開される場合に公衆に対していかなる影響を及ぼすかを精確に判定し、その影響が社会の秩序を紊乱し善良な風俗を壊乱するようなものであった場合に、その公開を禁止すること・・・ 和辻哲郎 「蝸牛の角」
・・・あたり前の現象として人々が不思議がらない事柄のうちに不思議を見出すのが、法則発見の第一歩なのである。寺田さんは最も日常的な事柄のうちに無限に多くの不思議を見出した。我々は寺田さんの随筆を読むことにより寺田さんの目をもって身辺を見廻すことがで・・・ 和辻哲郎 「寺田寅彦」
・・・肉の執着といい生命虚栄の執着という、すべて人生を乱す魔道である。数億の人類が数億の眼を白うして睨み合う。睨み合う果てに噛み合いを初める。この地獄に似る混沌海の波を縫うて走る一道の光明は「道徳」である。吾人はここにおいて現代の道徳に眼を向ける・・・ 和辻哲郎 「霊的本能主義」
出典:青空文庫