・・・などが並立して露伴、紅葉、美妙斎、水蔭、小波といったような人々がそれぞれの特色をもってプレアデスのごとく輝いていたものである。氏らが当時の少青年の情緒的教育に甚大な影響を及ぼしたことはおそらくわれわれのみならずまたいわゆる教育家たちの自覚を・・・ 寺田寅彦 「読書の今昔」
・・・ 新型式中でも最も思い切った新型式としては、モザイックのような表象を漢字交じりで並べたテキストに、そのテキストとはだいぶかけ離れたルビーを並立させたものがある。これらになるともう単に俳句としての型式だけの変異ではなくて、詩というものの本・・・ 寺田寅彦 「俳句の型式とその進化」
・・・ゆえに今、帝室より私学校を保護するに、かねて、学者の篤志なるものを撰び、これに年金をあたえて、その生涯安身の地位を得せしめたらば、おのずから我が学問社会の面目を改めて、日新の西洋諸国に並立し、日本国の学権を拡張して、鋒を海外に争うの勢にいた・・・ 福沢諭吉 「学問の独立」
・・・この点に就ては我輩も氏の事業を軽々看過するものにあらざれども、独り怪しむべきは、氏が維新の朝に曩きの敵国の士人と並立て得々名利の地位に居るの一事なり(世に所謂大義名分より論ずるときは、日本国人はすべて帝室の臣民にして、その同胞臣民の間に敵も・・・ 福沢諭吉 「瘠我慢の説」
・・・積極的、消極的両美の並立すべきがごとく、これもまた並立して各自の長所を現わすを要す。主観を叙して可なるものあり、叙して不可なるものあり。客観を写して可なるものあり、写して不可なるものあり。可なるものはこれを現わし不可なるものはこれを現わさず・・・ 正岡子規 「俳人蕪村」
・・・この観念と並立していて、私という人物がこれまで中途半端にしか生活もせず考えもせずに暮して来たという自嘲自責で身をよじっているとき、内心その姿に手をかけてなぐさめてとなり、合理づける囁きとして存在している、もう一つの観念がある。 それは、・・・ 宮本百合子 「観念性と抒情性」
出典:青空文庫