・・・と、歯の無い口でむぐむぐと唱えて、「それ、利くであしょ、ここで点えるは施行じゃいの。艾入らずであす。熱うもあすまいがの。それ利くであしょ。利いたりゃ、利いたら、しょなしょなと消しておいて、また使うであすソ。それ利くであしょ。」と嘗め廻す・・・ 泉鏡花 「露肆」
・・・同じ注に、欧州大戦のときフランスに出征中のアメリカ軍では驢馬のいななくのを防ぐために「ある簡単なる外科手術を施行した」とある。やはり西洋人は残酷である。 昨夜これを読んだけさ「南北新話」をあけて見ると夜の明けやすい白無垢は損・・・ 寺田寅彦 「俳諧瑣談」
・・・然りといえども、余輩が今ここにいうところの政の字は、その意味のもっとも広きものにして、ただ政府の官員となり政府の役所に坐して事を商議施行するのみをもって、政にかかわるというに非ず。人民みずから自家の政に従事するの義を旨とするものなり。 ・・・ 福沢諭吉 「学者安心論」
・・・他なし、自己の幸福、社会の安全に関係するところのものなれども、ただ審判の力に乏しくして、あるいは事の成を期すること急に過ぎ、あるいはその事を施行すること劇に過ぎて、心事の本色を現わすこと能わざるのみ。 たとえば少年の勇士が死を決して自か・・・ 福沢諭吉 「教育の目的」
・・・ところがこんど制定される行政施行法によれば、すべて委員会と名のつくものは政府の統轄のもとにおかれなければならないことになる。政府にたいして独立の発言権をもてばこそ、たとえば労働委員会にしても勤労大衆の福祉のためになにかのプラスを加えることが・・・ 宮本百合子 「今日の日本の文化問題」
出典:青空文庫