・・・シャツ、ヅボン下、鰻の罐詰、茶、海苔等なり。電話にて春陽堂へ『文学論評』の送付を促がす。売切の由答あり。二十五六日頃再版出来のよし」などと文化史的な興味深い記述の最後に「八重子『鳩公の話』といふ小説をよこす。出来よろし。虚子に送附」と書かれ・・・ 宮本百合子 「含蓄ある歳月」
・・・品川沖へ海苔とりに出たお爺さん漁師がモーターが凍ったところへいろいろ網にひっかかったりして不幸にも凍死したという話があります。私はゆうべも仕事をしていたがあまり寒いので寝てしまいました。寝ながら、さむいといってもここには火鉢があるということ・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・ 私は島田の父上[自注7]の御好物の海苔をおことづけ願いましたし、べったら漬もあるし、まあ東京からおかえりらしいお土産が揃って結構でした。 お立ちになってから林町へ一緒にまわってお風呂に入って、十二時一寸前家へかえりました。栄さんが・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・今、食堂に居たところ、先ず大きな大きな海苔まきのような毛布包みの泰子を抱いて寿江子が現われたと思ったら、ホゲーホゲーという声を先立てて、赤ちゃんを抱いたああちゃんが続いて御出現。泣き合せという光景です。御想像がつきますか? 私は二階へ上らざ・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・後者では東京湾の海苔生産の描写が大仕掛に文化映画的にかかれていて、その間に展開される人間の生活との比重に狂いを生じてさえいる。 それ等の工夫にかかわらず、系譜的と云われる作品が、とかく生活の生々しい絵巻というより楽な過ぎこし方の物語とな・・・ 宮本百合子 「今日の文学の諸相」
・・・おなかが空いたが板場は宵に家へ帰ったというので、餅をやき、海苔を巻いてたべる。女中達が、夜なかに吊橋を渡って髪結いに出かける下駄の歯の音だけが、どうやら大晦日らしい。去年の都会的越年とはひどく違う。去年はフダーヤと暁の三時頃神楽坂で買物をし・・・ 宮本百合子 「湯ヶ島の数日」
出典:青空文庫