・・・その結果として、理論の上では、ああかこうかと纏まりのつくようなことも言い得る。また過去の私が経歴と言っても、十一二歳のころからすでに父母の手を離れて、専門教育に入るまでの間、すべてみずから世波と闘わざるを得ない境遇にいて、それから学窓の三四・・・ 島村抱月 「序に代えて人生観上の自然主義を論ず」
・・・文明の結果で飾られていても、積み上げた石瓦の間にところどころ枯れた木の枝があるばかりで、冷淡に無慈悲に見える町の狭い往来を逃れ出て、沈黙していながら、絶えず動いている、永遠なる自然に向って来るのである。河は数千年来層一層の波を、絶えず牧場と・・・ 著:シュミットボンウィルヘルム 訳:森鴎外 「鴉」
・・・ されば堯典記載の天文が、今日の科學的進歩の結果と相合はず、その十二宮、二十八宿を東西南北の相稱的位置に排列せることが、天文の實際にあはざることも、もとより當然のことなり。この堯典の記事は天文の實地觀測に立脚せるものには非ずして、占星思・・・ 白鳥庫吉 「『尚書』の高等批評」
・・・その中には、浮浪人もかなりたくさんいて、いろいろわるいことばかりするので、警察も急にいろいろのやかましい法令をつくり、ついで衛生上のことにもあれこれと手をつくし出した結果、恐水病をふせぐために、町中に、のら犬を歩かせないことにきめてしまいま・・・ 鈴木三重吉 「やどなし犬」
・・・画を書いてお目にかけると、よくわかるのですが、謂わば、フランス式とドイツ式と二つある。結果は同じ様なことになるのだが、フランス式のほうは、すべての人に納得の行くように、いかにも合理的な立場である。けれども、いまの解析の本すべてが、不思議に、・・・ 太宰治 「愛と美について」
・・・ その会議の結果はこうである。親族一同はポルジイに二つの道を示して、そのどれかを行わなくてはならないことにした。その一は軍職を罷めて、耕作地の経営に長じているという噂のあるおじさんのいる、スラヴ領の荘園に行って、農業を研究するのである。・・・ 著:ダビットヤーコプ・ユリウス 訳:森鴎外 「世界漫遊」
・・・遼陽の攻略の結果を、死の床に横たわって考えている小さなあわれな日本国民の心は、やがてこの世界的光栄をもたらしえた日本国民すべての心ではないか。 それに、舞台が私の故郷に近いので、いっそうその若い心が私の心に滲みとおって感じられるように思・・・ 田山花袋 「『田舎教師』について」
・・・遠い恒星の光が太陽の近くを通過する際に、それが重力の場の影響のために極めてわずか曲るだろうという、誰も思いもかけなかった事実を、彼の理論の必然の結果として鉛筆のさきで割り出し、それを予言した。それが云わば敵国の英国の学者の日蝕観測の結果から・・・ 寺田寅彦 「アインシュタイン」
・・・今になってみると、道太自身も姉に担がれたような結果になっているので、人のよすぎる姉に悪意はないにしても、姪の結婚に山気のあったことは争われなかった。「何しろあの連中のすることは雲にでも乗るようで、危なくてしようがない」「ふみ江ちゃん・・・ 徳田秋声 「挿話」
・・・しかしながらその結果は皇室に禍し、無政府主義者を殺し得ずしてかえって夥しい騒擾の種子を蒔いた。諸君は謀叛人を容るるの度量と、青書生に聴くの謙遜がなければならぬ。彼らの中には維新志士の腰について、多少先輩当年の苦心を知っている人もあるはず。よ・・・ 徳冨蘆花 「謀叛論(草稿)」
出典:青空文庫