・・・いずれにしても著述家として多少認められ、相当な学識もあり、科学に対してもかなりな理解を有っている人である事は、この書の内容からも了解する事が出来る。 この人のアインシュタインに対する関係は、一見ボスウェルのジョンソン、ないしエッカーマン・・・ 寺田寅彦 「アインシュタインの教育観」
・・・著名な科学者の一代の大論文を読んで感心したあとで、その人のその論文を書くまでの道筋を逆にたどってそれまでのその人の著述を順々に古いほうへと読んで行くと、最初に感心させられたものが、きわめて平凡なあたりまえの落ち着き所であるとしか思えなくなっ・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
・・・しかし、さらに一歩を進めて、科学上の傑出した著述はすべて芸術であると言おうとすれば、これにはおそらく容易に同感を表しかねる人が多いであろうと思われる。こういう見方はしかし、実はそれほど無稽なものでないということは、すでに自分のみならず、他の・・・ 寺田寅彦 「科学と文学」
・・・ 彼の好色物に現われた性生活の諸相の精細な描写記録は、この人間界の最も深刻な事実を事実として客観的に集輯したものであるには相違ないが、彼がそういうものを著述する際における彼の態度が、果して動物の観察者が動物の生活を記載する場合と同じもの・・・ 寺田寅彦 「西鶴と科学」
・・・を研究し開展させて後世に対する古典文献を著述するであろうと思って期待していたが、自分の知る限りまだそうした著書はおろか論文も見当たらない。そんなものを書いても今の日本では学位も取れず金ももうからないためかもしれない。しかし昨今のように国粋的・・・ 寺田寅彦 「相撲」
・・・あるいは平々淡々のうちに人を引き着ける垢抜けのした著述を推すもいい。猛烈なものでも、沈静なものでも、形式の整ったものでも、放縦にしてまとまらぬうちに面白味のあるものでも、精緻を極めたものでも、一気に呵成したものでも、神秘的なものでも、写実的・・・ 夏目漱石 「作物の批評」
・・・もっともたくさんの著述のうちでごく短かい一冊を読んだだけでありますが、とにかくその人の説の中にこういう事が書いてありました。現代の人はしきりに自由とか開放とかいうような事を主張する。同時に秩序とか組織とか云うものを要求している。一方では束縛・・・ 夏目漱石 「中味と形式」
・・・先生の意は、学位を辞退した人間としての夏目なにがしに自分の著述を読んでもらって、同じく博士を辞退した人間としての夏目なにがしに、その著述を天下に紹介してもらいたいという所にあるのだろうと思うからである。――明治四四、三、六―八『東京朝日・・・ 夏目漱石 「博士問題とマードック先生と余」
・・・こういう意味において、先生の著述は日本を外国に紹介する上に非常な利益があるばかりでなく、研究心に富んだ外国人が、われら自身を如何に観察しているかを知る便宜もまた甚だ少なくないのである。 西洋の雑誌を見ると、日本に関した著述の広告は、一週・・・ 夏目漱石 「マードック先生の『日本歴史』」
・・・我輩固より記者の誠意を非難するには非ざれども、女大学の著述以後二百余年の今日に於て、人智の進歩、時勢の変遷を視察し、既往の事実に徴して将来の幸福を求めんとするときは、如何にしても古人の説に服従するを得ず、敢て反対を試みる所以なり。抑も在昔封・・・ 福沢諭吉 「女大学評論」
出典:青空文庫