・・・片端から調べる。出ていない。出ていないのが、かえって不安であった。記事差止め。秘密裡に犯人を追跡しているのに違い無い。 こうしては、おられない。金のある限りは逃げて、そうして最後は自殺だ。 鶴は、つかまえられて、そうして肉親の者たち・・・ 太宰治 「犯人」
・・・もしその欠けたのの特別な色合でも何か調べる必要があるのなら持って行ってもいいが、もう一つ欠けないのもぜひ持って行けというのである。 それでは私が困るからと云ってみたが、「いえ、とんでもない事です」と云ってなかなか聞き入れてはくれない。・・・ 寺田寅彦 「ある日の経験」
・・・この池の水の運動についてもまだ調べれば調べる事がいくらでも残っている。池の測深もその時やった結果が紀要に出ている。案外深い池である。 自分の知っているだけの文献を数えてみても、これだけあるのだから、私などの知らない他の方面の学科に関する・・・ 寺田寅彦 「池」
・・・ 実際にこういう空間曲線を作る事は厄介であるから、その代りにこの曲線をXZ面とYZ面に投射したものと二つを画いて調べる外はないのである。 こんなような考えから、私はいつぞや先ずこのXZ面の射影、すなわち唇の出方のいろいろと変る方だけ・・・ 寺田寅彦 「歌の口調」
・・・そのためには五感のうちの一つを欠いた人間の知識の内容がどのようなものかという事を調べるのも、最も適当な手掛りの一つだと思われた。それを調べた上で、もし出来るならば、世界中の人間がことごとく盲あるいは聾であったとしたらこれらの人間の建設した科・・・ 寺田寅彦 「鸚鵡のイズム」
・・・ 地震だけを調べるのでは、地震の本体は分りそうもない。四 地震の予報 地震の予報は可能であるかという問題がしばしば提出される。これに対する答は「予報」という言葉の解釈次第でどうでもなる。もし星学者が日蝕を予報すると同じよ・・・ 寺田寅彦 「地震雑感」
・・・ 二 いつか夏目先生生前のある事がらについて調べることがあって小宮君と自分とでめいめいの古い日記を引っぱり出して比べたことがあった。そのとき気のついたのは自分の日記にはとかく食いものの記事が多いということであった・・・ 寺田寅彦 「詩と官能」
・・・さア大変秋山を殺すなという騒ぎになって、××じゃ将校連が集って、急いで人名簿を調べる。そうして水練の上手な兵士を三十人選抜して、秋山大尉を捜させようと云うんだ。その人選のなかへ、私のとこの忰も入ったのさね。」 吉兵衛さんの顔が、紅く火照・・・ 徳田秋声 「躯」
・・・それについては少し学究めきますが、日本とか現代とかいう特別な形容詞に束縛されない一般の開化から出立してその性質を調べる必要があると考えます。御互いに開化と云う言葉を使っておって、日に何遍も繰返しているけれども、はたして開化とはどんなものだと・・・ 夏目漱石 「現代日本の開化」
・・・「大きな望遠鏡で銀河をよっく調べると銀河は大体何でしょう。」 やっぱり星だとジョバンニは思いましたがこんどもすぐに答えることができませんでした。 先生はしばらく困ったようすでしたが、眼をカムパネルラの方へ向けて、「ではカムパ・・・ 宮沢賢治 「銀河鉄道の夜」
出典:青空文庫