出典:青空文庫
・・・ さてその智恵の無い談話の題目は「曲亭馬琴の小説とその当時の実社会」というのでございます。題の付けようが少し拙いか知れませんが、私の申し上げてみようというのは、その当時、即ち馬琴が生存して居た時代との関係が、どんな工合であろうかという点・・・ 幸田露伴 「馬琴の小説とその当時の実社会」
・・・ 江戸時代随一の物知り男曲亭馬琴の博覧強記とその知識の振り廻わし方は読者の周知の通りである。『八犬伝』中の竜に関するレクチュアー、『胡蝶物語』の中の酒茶論等と例を挙げるまでもないことである。しかるに馬琴の知識はその主要なるものは全部机の・・・ 寺田寅彦 「西鶴と科学」
・・・私が最後に茗荷谷のほとりなる曲亭馬琴の墓を尋ねてから、もう十四、五年の月日は早くも去っている……。明治四十三年七月 永井荷風 「伝通院」
・・・にしろ、芥川龍之介が王朝の画匠や曲亭馬琴を主人公としてその作を書いたのは、決して所謂歴史小説を書こうためではなかった。人物と時代とを過去にかりて、テーマは作者自身の現実生活に横わっている芸術上の勇猛心を描こうと試みたものであり、或は文学にお・・・ 宮本百合子 「鴎外・芥川・菊池の歴史小説」