・・・お職女郎の室は無論であるが、顔の古い幅の利く女郎の室には、四五人ずつ仲のよい同士が集ッて、下戸上戸飲んだり食ッたりしている。 小万はお職ではあり、顔も古ければ幅も利く。内所の遣い物に持寄りの台の数々、十畳の上の間から六畳の次の間までほと・・・ 広津柳浪 「今戸心中」
・・・さあ僕等はもう黒雲の中に突き入ってまわって馳けたねえ、水が丁度漏斗の尻のようになって来るんだ。下から見たら本当にこわかったろう。『ああ竜だ、竜だ。』みんなは叫んだよ。実際下から見たら、さっきの水はぎらぎら白く光って黒雲の中にはいって、竜・・・ 宮沢賢治 「風野又三郎」
・・・教師はバケツの中のものを、ズック管の端の漏斗に移して、それから変な螺旋を使い食物を豚の胃に送る。豚はいくら呑むまいとしても、どうしても咽喉で負けてしまい、その練ったものが胃の中に、入ってだんだん腹が重くなる。これが強制肥育だった。 豚の・・・ 宮沢賢治 「フランドン農学校の豚」
・・・ 二月十六日 春の日影 Feb. 23rd.巨大な砂時計の玻璃の漏斗から刻々をきざむ微かな砂粒が落るにつれ我工房の縁の辺ゆるやかに春の日か・・・ 宮本百合子 「海辺小曲(一九二三年二月――)」
・・・○鷸掻、三人冗語、雲中語をとびとびによみ、明治文学史のよいのが一日も早く出ることを希う。 宮本百合子 「無題(六)」
出典:青空文庫