出典:青空文庫
・・・しかし、若し、世界が現状のまゝの行程を辿るかぎり、いかに巧言令辞の軍縮会議が幾たび催されたればとて、急転直下の運命から免れべくもない。こう思って、何も知らずに、無心に遊びつゝある子供等の顔を見る時、覚えず慄然たらざるを得ないのであります。・・・ 小川未明 「男の子を見るたびに「戦争」について考えます」
・・・大正池からそこまで二里に近い道程を山腹に沿うて地中の闇に隧道を掘り、その中を導いて緩かに流して来た水を急転直下させてタービンを動かすのである。この工事を県当局で認可する交換条件として上高地までの自動車道路の完成を会社に課したという噂話を同乗・・・ 寺田寅彦 「雨の上高地」
・・・ピアノの音からこの旗のはためきに移る瞬間に、われわれはちょうどあるシンフォニーでパッショネートな一楽章から急転直下 Attacca subita il seguente に明朗なフィナーレに移るときと同じような心持ちを味わうのである。 ・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
・・・裁判は急転直下、有利に解決し、今度は乾分をやった方の男が音頭をとって経営しはじめたが、この男は満州へばかり度々出かけるし、濫費するので、遂に専務をやめざるを得なくなった。 ここへ別の一人物が登場して来る。某大銀行の持っているドックで働い・・・ 宮本百合子 「くちなし」