出典:青空文庫
・・・ 怖さは小宮山も同じ事、お雪の背中へ額を着けて、夜の明くるのをただ、一刻千秋の思で待構えまする内に疲れたせいか、我にもあらずそろそろと睡みましたと見えて、目が覚めると、月の夜は変り、山の端に晴々しい旭、草木の露は金色を鏤めておりました。・・・ 泉鏡花 「湯女の魂」
・・・もう好加減に通りそうなもの、何を愚頭々々しているのかと、一刻千秋の思い。死骸の臭気は些も薄らいだではないけれど、それすら忘れていた位。 不意に橋の上に味方の騎兵が顕れた。藍色の軍服や、赤い筋や、鎗の穂先が煌々と、一隊挙って五十騎ばかり。・・・ 著:ガールシンフセヴォロド・ミハイロヴィチ 訳:二葉亭四迷 「四日間」