出典:青空文庫
・・・ったにしろ、沼南夫妻の属するU氏の教会と私とは何の交渉がなかったにしろ、良心が働いたなら神の名を以てする罪の裁きを受ける日にノメノメ恥を包んで私の前へは出て来られないはずであるのを、サモ天地に恥じない公明正大の人であるかのような平気な顔をし・・・ 内田魯庵 「三十年前の島田沼南」
・・・ これらの點より推さばこの傳説作者は、天地人三才の思想を背景にして、之を創作せるものなるべく、漢人殊に儒教が天子に望む所は公明正大、その間に一點の私を插むなからんことなれば、この理想を堯に托してその禪讓をつくり、人道の理想を舜に、勤勉の・・・ 白鳥庫吉 「『尚書』の高等批評」
・・・又国内思想指導の方針としては、較もすれば党派的に陥る全体主義ではなくして、何処までも公明正大なる君民一体、万民翼賛の皇道でなければならない。 以上は私が国策研究会の求に応じて、世界新秩序の問題について話した所の趣旨である。各国家・・・ 西田幾多郎 「世界新秩序の原理」
・・・ 親が子供を躾けるとき、先ず願うことは、体が丈夫であることの次に、正直な、公明正大な人間になって欲しいということであると思います。 子供たちが、正直な、公明正大な人間となってゆくために、果して現在の社会の有様は、ふさわしいもので・・・ 宮本百合子 「新しい躾」
この社会に公明正大に生きてゆくためには、公私の別をよくわきまえていかなければならない。このことは、よく昔からくりかえして云われて来ております。そして、誰しも一応はわかって暮しているわけでしょうが、昨今私どもが周囲の生活を見・・・ 宮本百合子 「公のことと私のこと」
・・・そのような公明正大な性のあらわれに対して、おどろかされた人々は、どうとがめていいか分らず、しかもだまっていられない衝動にうごかされる。自分たちに信じられないおおっぴらさで、きまじめさで、フランネル・シャツの男が、自分たち階級におとなしく帰属・・・ 宮本百合子 「傷だらけの足」
・・・ ソヴェト市民が欲しがっていたのは、ハァハァと陽気闊達に笑う哄笑であり、仲間の脇腹を突つきながら、快心をもって破顔する公明正大な笑いであったのだろう。ソヴェト市民の生活感情に、そういうユーモアがないならば、イリフ、ペトロフ二人のような辛・・・ 宮本百合子 「政治と作家の現実」
・・・ 生田花世氏の言葉「余り不幸だと一種の公明正大さが出来ますな、自分の利益にはならないでもね」 野上さんの或面「情の人には嫌われても、知の人には尊敬される人ですね。面白い存在だと思います」――伊・・・ 宮本百合子 「一九二五年より一九二七年一月まで」
・・・バンチ博士の見解と行動にノーベル賞を与えた人々は、彼の善意を国際政治の道路掃除夫或は屍体処理人夫たらしめないために、誠意をもって科学の成果と人間関係方面の成果との公明正大な結合を承認すべきである。科学の天才にたのんで、非人間的なグロバリズム・・・ 宮本百合子 「「人間関係方面の成果」」
・・・いつの間にかポツダム宣言で武装放棄したにかかわらず何人かのために軍需化され、五年後には主要食糧生産の増加率よりも鉄の生産率の増大が計画されているとしたら、そういうたくらみを推進させつつある権力が、より公明正大であり日本の人民の運命に対して責・・・ 宮本百合子 「便乗の図絵」