出典:青空文庫
・・・ひろ子は実験用テーブルをぐるりとまわって、仔細に千差万別の形をし、はり紙をつけられ、一見無雑作に、しかも極めて意味のある秩序をもって整理されている瓶や試験管の林立を眺めた。 重吉は、そうやって大テーブルのまわりを珍しそうにまわっているひ・・・ 宮本百合子 「風知草」
・・・ けれども、戦争と、それからひきおこされた不幸は、千差万別のあらわれはもっていても、根本はただ一つの原因と結論の上に立っています。それは戦争が人類的罪悪であるということと、その戦争は、すべての人の努力によって、これから又くりかえされるこ・・・ 宮本百合子 「未亡人への返事」
・・・施設者はアメリカと同様に千差万別であり自由経営になっている。普及率の面から見て最低中華民国、スペイン、イタリー、ポーランド、日本という順である。このことと、これらの国々における民衆経済力の低度とを思い合わせる時、ラジオも亦複雑な社会相を語る・・・ 宮本百合子 「「ラジオ黄金時代」の底潮」
・・・もしそうであるならば猶更、人生の生理こそ必要ではないか。千差万別の事情ではありながら、大略今日の物質と精神の窮乏の状態、それに屈し切れない人間性の身もだえに於ては百万人の若い女が近似している。それを積極的なものに発展させ、転化させようとする・・・ 宮本百合子 「私たちの社会生物学」