出典:青空文庫
・・・人として、自分の生活内容をあらゆる方面に伸展させて行こうとする願望と一緒に、同じ心の中から、この歩幅を縮めさせ、左顧右眄させて、終に或る処まで、見越をつけさせて仕舞うような何かの動機があるのである。 四 今・・・ 宮本百合子 「概念と心其もの」
・・・ ヒューマニズムとは、勇気と沈着さとで我々がおかれている現実の環境とその推移の本質を見とおし、恋愛においても、偸安に便利な条件を左顧右眄して探すのではなく、愛しうるひとを愛し抜こうとしてゆく人間の意志とその実践と、その過程に生まれてゆく・・・ 宮本百合子 「若き世代への恋愛論」
・・・この男は左顧右眄することをなさない。物にあって一歩をゆるくすることもなさず、一歩を急にすることをもなさない。旁若無人という語はこの男のために作られたかと疑われる。 この車にあえば、徒歩の人も避ける。騎馬の人も避ける。貴人の馬車も避ける。・・・ 森鴎外 「空車」