出典:青空文庫
・・・つまらぬ事で蹉跌してはならぬ。常住坐臥に不愉快なことがあったとしても、腹をさすって、笑っていなければならぬ。いまに傑作を書く男ではないか、などと、もっともらしい口調で、間抜けた感慨を述べている。頭が、悪いのではないかと思う。 たまに新聞・・・ 太宰治 「作家の像」
・・・で貸借の争議を示談させるために借り方の男の両手の小指をくくり合せて封印し、貸し方の男には常住坐臥不断に片手に十露盤を持つべしと命じて迷惑させるのも心理的である。エチオピアで同様の場合に貸し方と借り方二人の片脚を足枷で縛り合せて不自由させると・・・ 寺田寅彦 「西鶴と科学」
・・・この花やかにしゃちこばった気分がドイツ大学生特にいわゆるコアー学生の常住坐臥を支配しているように思われるのであった。 大学の玄関の左側にはちょっとした売店があって文具や、それから牛乳パンくらいを売っていたような気がする。オペラ、芝居、そ・・・ 寺田寅彦 「ベルリン大学(1909-1910)」
・・・、さすがに筋目正しい血筋の昔を忘れぬためか、あるいはまた、あらゆる芸術の放胆自由の限りを欲する中にも、自然と備る貴族的なる形の端麗、古典的なる線の明晰を望む先生一流の芸術的主張が、知らず知らず些細なる常住坐臥の間に現われるためであろうか。(・・・ 永井荷風 「妾宅」
・・・――国家は大切かも知れないが、そう朝から晩まで国家国家と云ってあたかも国家に取りつかれたような真似はとうてい我々にできる話でない。常住坐臥国家の事以外を考えてならないという人はあるかも知れないが、そう間断なく一つ事を考えている人は事実あり得・・・ 夏目漱石 「私の個人主義」