出典:青空文庫
・・・のカールをイエニーはわれを忘れて見とれた。直情径行で妥協ぎらいで廉潔なカールは、イエニーから見れば本当に巨人的な子供であった。その鼻の形が示しているように気短かなところがあるカールは、何かにつけてイエニーの驚くべき公平な判断と聰明を必要とし・・・ 宮本百合子 「カール・マルクスとその夫人」
・・・ 大人になりきった人は、少年から青年期の無思慮な思い出にたいしてさえも微笑むのだけれども、いままさに十七歳であり、少年と青年とのあいなかばした成長の過程にあるものが、直情径行に願うことは何であろう。それは、ひたすらに一人前の青年であろう・・・ 宮本百合子 「現代の主題」
・・・人々は直情径行で、美しいことは美しく、泣きたい時に泣き、愛すれば心も身もその愛にうちこむ日本人の感情が現われている。万葉集をみると、当時は支配権力が決して後世のように確立していなかったこともうかがえるのである。 万葉集の時代が過ぎて文学・・・ 宮本百合子 「女性の歴史」
・・・ エミール・ヤニングスが映画のオセロに扮したとき、彼はそのもち味で、黒人の英雄であるオセロの直情径行の素朴な人間性とデスデモーナへの情熱の面を強調した。シェクスピアは、オセロをもうすこし複雑に生かしている。黒人英雄の官能をつき動かす濃く・・・ 宮本百合子 「デスデモーナのハンカチーフ」