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・・・ 神出鬼没の雲の動作程、美と不可知の力を蔵するものは他にあるまい。しかし、たゞ、それは、自然の意志の反映なのである。即ち、自然なるが故に、自由なのである。言い換えれば自然は、自由そのものであるからだ。 雲に思いを寄せ、追懐と讃美を恣・・・
小川未明
「常に自然は語る」
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・・・ その語がまだ終らないうちに、神出鬼没のとっこべとらこが、門の向うの道のまん中にまっ白な毛をさか立てて、こっちをにらんで立ちました。「わあ、出た出た。逃げろ。逃げろ」 もう大へんなさわぎです。みんな泥足でヘタヘタ座敷へ逃げ込みま・・・
宮沢賢治
「とっこべとら子」