出典:青空文庫
・・・けれども、君のその嘆声は、いつわりである。一得一失こそ、ものの成長に追随するさだめではなかったか。永い眼で、ものを見る習性をこそ体得しよう。甲斐なく立たむ名こそ惜しけれ。なんじら断食するとき、かの偽善者のごとく、悲しき面容をすな。キリストだ・・・ 太宰治 「虚構の春」
・・・今日においても官学校の生徒と私学校の生徒とを比較すれば、その学芸の進歩、一得一失、未だ優劣を決すべからず。あるいは学校費用の一点について官私を比較すれば、私立の方に幾倍の便利あること明らかに保証すべし。されば人民の政は、ただ多端なるのみに非・・・ 福沢諭吉 「学者安心論」
・・・現在の下女下男を宜しからずと思わば、既往数年の事を想起し、其数年の間に如何なる男女が果して最上にして自分の意に適したるや、其者は誰々と指を屈したらば、おの/\一得一失にして、十分の者は甚だ少なかる可し。既往斯の如くなれば現今も斯の如し。将来・・・ 福沢諭吉 「新女大学」