出典:青空文庫
・・・そこで、……オイコラオイコラで引張って来るんだがね、それがもうほとんど百発百中だった」「……フム、そうかな。でそんな場合、直ぐ往来で縄をかけるという訳かね?」「……なあんで、縄なぞかけやせんさ。そりゃもう鉄の鎖で縛ったよりも確かなも・・・ 葛西善蔵 「子をつれて」
・・・矢継早の名人で、機関銃のように数百本の矢をまたたく間にひゅうひゅうと敵陣に射込み、しかも百発百中、というと講談のようになってしまうが、しかし源氏には、不思議なくらい弓馬の天才が続々とあらわれた事だけは本当である。血統というものは恐ろしいもの・・・ 太宰治 「花吹雪」
・・・いまは百発百中である。けれどもまだまだ安心はできない。相手はこの根株のようにいつもだまって立ちつくしてはいない。動いているのだ。次郎兵衛は三島のまちのほとんどどこの曲りかどにでもある水車へ眼をつけた。富士の麓の雪が溶けて数十条の水量のたっぷ・・・ 太宰治 「ロマネスク」
・・・例えば今月中少なくも各一回の雨天と微震あるべしというごとき予報は何人も百発百中の成効を期して宣言するを得べし。ここに問題となるは予報の実用的価値を定むべき標準なり。 予報によりて直接間接に利便を感ずべき人間の精神的物質的状態は時並びに空・・・ 寺田寅彦 「自然現象の予報」