出典:青空文庫
・・・世にいわゆる妖怪変化の類は、すべてこれ鬼神力の具体的現前に外ならぬ。 鬼神力が三つ目小僧となり、大入道となるように、また観音力の微妙なる影向のあるを見ることを疑わぬ。僕は人の手に作られた石の地蔵に、かしこくも自在の力ましますし、観世音に・・・ 泉鏡花 「おばけずきのいわれ少々と処女作」
・・・魔とも、妖怪変化とも、もしこれが通魔なら、あの火をしめす宮奴が気絶をしないで堪えるものか。で、般若は一挺の斧を提げ、天狗は注連結いたる半弓に矢を取添え、狐は腰に一口の太刀を佩く。 中に荒縄の太いので、笈摺めかいて、灯した角行燈を荷ったの・・・ 泉鏡花 「茸の舞姫」
・・・しからざれば、妖怪変化豈得てかくのごとく活躍せんや。 この書、はじめをその地勢に起し、神の始、里の神、家の神等より、天狗、山男、山女、塚と森、魂の行方、まぼろし、雪女。河童、猿、狼、熊、狐の類より、昔々の歌謡に至るまで、話題すべて一百十・・・ 泉鏡花 「遠野の奇聞」
・・・すべての物体は雲煙のごとくまた妖怪変化と類を同じうするだろう。 重量約一匁とか長さ約一寸といえば通例衡り方度り方の粗雑な事を意味する。丁度一匁とかキッチリ一寸など云えば大変に正確に聞えるが、精密とか粗雑とかいうのも結局は相対的の言葉であ・・・ 寺田寅彦 「方則について」