なんきつほくき【南橘北枳】
人間は住む環境によって、よくなったり悪くなったりするということ。▽中国江南こうなんで産する橘たちばなはたいへんな美味であるが、淮水わいすい以北に植えると橘は枳からたちとなり、味が全く異なってしまう。環境が変われば性質も変わってしまう、という意。
なんぎょうくぎょう【難行苦行】
さまざまな苦労・苦難にたえる修行のこと。転じて、ひどく苦労をすること。▽仏教語。「行」はもともと仏教の修行のこと。
なんこうじんちゅう【輭紅塵中】
華やかで、にぎやかな都会の様子。▽「輭」は「軟」と同じ。「輭」はやわらかい花びら。転じて、都会の華やかな雑踏の形容。「紅」は華やかな印象を与える色。「塵中」は車馬の行き交う際に舞い上がる塵ちりやほこりの中の意。
にがびゃくどう【二河白道】
極楽浄土に往生したいと願う人の、入信から往生に至る道筋をたとえたもの。▽仏教語。「二河」は南の火の川と、北の水の川。火の川は怒り、水の川はむさぼる心の象徴。その間に一筋の白い道が通っているが、両側から水火が迫って危険である。しかし、後ろからも追っ手が迫っていて退けず、一心に白道を進むと、ついに浄土にたどりついたという話。煩悩にまみれた人でも、念仏一筋に努めれば、悟りの彼岸に至ることができることを説いている。
にちりょうげったい【日陵月替】
日に日に衰退していくこと。▽「陵」は丘、また衰える、廃れる意。「替」は廃れることで、丘がだんだん低くなるように衰えること。「日~月~」は日に日にそうなっていくこと。「日ひに陵りょうし月つきに替たいす」と訓読する。
にっきょげっしょ【日居月諸】
君臣、君主とその夫人、父と母などのたとえ。また、月日が流れ去ること。▽「居」「諸」はともに句末に置いて語調を整える字。「日よ月よ」と呼び掛けている。「日」と「月」は、ともに天に輝き下界を照らしていることから、君主と夫人にたとえられる。のち、日付の月日の意味をもたせるようになった。一般に「日ひや月つきや」と訓読を用いる。
にゅうきょうもんきん【入境問禁】
ほかの国や地方に行ったら、まずそこで禁じられていることを尋ね、それを犯さないようにすべきであるということ。よそに行ったら、そこの慣習を守るべきことを述べた言葉。▽「入境」は国境を越える、別の国や地域に行くこと。「問」は質問する。「禁」は禁止する、また、禁止事項。一般に「境さかいに入いりては禁きんを問とう」と訓読を用いる。
ねんげみしょう【拈華微笑】
言葉を使わず、心から心へ伝えること。また、伝えることができること。▽仏教語。「拈華」は花をひねる意。「華」は草木の花の総称。「拈」は指先でひねること。
ねんぶつざんまい【念仏三昧】
心を静かにして、一心に仏を思い浮かべること。また、それによって得られる心の安らぎ。さらに、ひたすら念仏(南無阿弥陀仏なむあみだぶつ)を唱え、それにより雑念妄想を取り払うこと。▽仏教語。「念仏」は、仏を思い浮かべること。また、南無阿弥陀仏を唱えて、阿弥陀仏を思うこと。「三昧」は、何かに集中することによって、心が安定し動かされないこと。
はいもうけでん【廃忘怪顛】
うろたえること。狼狽(ろうばい)すること。「尋ぬる声にはっと二人が—」〈浄・手習鑑〉