えこひいき【依怙贔屓】
特に一方に心をかたむけ公平でないこと。また、好きなほうにだけ心を寄せ、肩入れすること。▽「依怙」は本来は頼る意であるが、わが国では不公平の意にもなる。「贔屓」はもと「ひき」と読み、盛んに力を用いて努力すること。転じて、特に目をかけて引き立てること。「贔」を「ひい」と読むのは「ひ」の長音化したもの。
おんじゅうとんこう【温柔敦厚】
穏やかでやさしく、情が深いこと。もと、孔子が儒教の基本的な古典で、中国最古の詩集である『詩経しきょう』の教化の力を評した語。『詩経』の詩篇は古代の純朴な民情が素直に歌われたもので、人を感動させ、教化する力をもっていると説いたもの。▽「温柔」は穏やかで柔和なこと。「敦厚」はねんごろで人情深いこと。
かくちにっしん【格致日新】
物事の道理や本質を追い求めて知識を深め、日々向上していくこと。▽「格致」は「格物致知」の略()。「日新」は日ごとに新しくなる、日ごとに向上する意。
かくぶつちち【格物致知】
物事の道理や本質を深く追求し理解して、知識や学問を深め得ること。『大学』から出た語で、大きく分けて二説ある。宋そうの朱熹しゅきは出典を「知を致いたすは物に格いたるに在り」と読んで、自己の知識を最大に広めるには、それぞれの客観的な事物に即してその道理を極めることが先決であると解釈する。一方、明みんの王守仁おうしゅじん(王陽明)は「知を致すは物を格ただすに在り」と読んで、生まれつき備わっている良知を明らかにして、天理を悟ることが、すなわち自己の意思が発現した日常の万事の善悪を正すことであると解釈している。他にも諸説ある。▽「致知格物ちちかくぶつ」ともいう。
きくじゅんじょう【規矩準縄】
物事や行為の標準・基準になるもののこと。手本。きまり。▽「規」はコンパス。円を描くのに用いる。「矩」は方形を描くさしがね(直角に曲がったものさし)。定規。「準」は水平を測るための水盛みずもり。水準器。「縄」は直線を引くための墨縄すみなわ。転じて、物事の基準や法則をいう。
きゃっかしょうこ【脚下照顧】
自分の足元をよくよく見よという意。もと禅家の語で、他に向かって悟りを追求せず、まず自分の本性をよく見つめよという戒めの語。転じて、他に向かって理屈を言う前に、まず自分の足元を見て自分のことをよく反省すべきこと。また、足元に気をつけよの意で、身近なことに気をつけるべきことをいう。▽「脚下」は足元の意。転じて、本来の自分、自分自身。「照顧」は反省し、よく考える、また、よくよく見る意。「照顧脚下しょうこきゃっか」ともいう。
こうじょうきく【鉤縄規矩】
物事や行為の標準・基準になるもののこと。物事の手本。きまり。▽「鉤」は先の曲がったかぎの意。ここでは曲線を描くための道具。半規または曲尺かねじゃくという説もあり、その形状は未詳。「縄」は直線を引くための墨縄すみなわのこと。「規」はコンパス・ぶんまわしのことで、円を描くのに用いる。「矩」は方形を描く差し金(直角に曲がった物差し)。
こうじょりょうぞく【公序良俗】
公の秩序と善良な風俗。社会的な妥当性が認められる道徳観。すべての法の基本理念で、法解釈やその適用のときの基準の一つ。▽「公序」は人々が守るべき社会の秩序。
ごえつどうしゅう【呉越同舟】
仲の悪い者同士や敵味方が、同じ場所や境遇にいること。本来は、仲の悪い者同士でも同じ災難や利害が一致すれば、協力したり助け合ったりするたとえ。▽「呉」「越」はともに中国春秋時代の国名。父祖以来の因縁の宿敵同士で、その攻防戦は三十八年に及んだという。
さくそくてきり【削足適履】
本末を取り違えて、無理に物事を行うたとえ。折り合いをつけて、無理に合わせるたとえ。また、目先のことにとらわれて、根本を考えないたとえ。大きな足を削り落として、靴に合わせる意から。▽「適」は合わせること。「履」は靴・はきものの意。「足あしを削けずりて履くつに適てきせしむ」と訓読する。