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・・・感情の一進一退はこんな風にもつれつつ危くなるのである。とにかく二人は表面だけは立派に遠ざかって四五日を経過した。 陰暦の九月十三日、今夜が豆の月だという日の朝、露霜が降りたと思うほどつめたい。その代り天気はきらきらしている。十五日が・・・
伊藤左千夫
「野菊の墓」
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・・・少くも利権割取を政治家の余得として一進一退を総て金に換えて怪まない今の政界にあっては沼南は実に鶏群の一鶴であった。 が、清廉を看板にし売物にする結果が貧乏をミエにする奇妙な虚飾があった。無論、沼南は金持ではなかった。が、その社会的位置に・・・
内田魯庵
「三十年前の島田沼南」