
1 (「憐れ」とも書く)強い心の動き。特に悲哀・哀憐の感情。不憫 (ふびん) と思う気持ち。「人々の―を誘った」「―をかける」「そぞろ―を催す」
2 かわいそうな状態。無惨な姿。「―をとどめる」
3 底知れないような趣。情趣。ものがなしさ。
「心なき身にも―は知られけり鴫 (しぎ) 立つ沢の秋の夕暮れ」〈新古今・秋上〉
4 どうすることもできないような心の動き。感慨。
「―進みぬれば、やがて尼になりぬかし」〈源・帚木〉
5 しみじみとした情愛・人情。慈愛の気持ち。
「子ゆゑにこそ、万 (よろづ) の―は思ひ知らるれ」〈徒然・一四二〉
1 (「憐れ」とも書く)かわいそうに思われるさま。気の毒だ。惨めだ。「その姿はいかにも―であった」
2 しみじみともの悲しく感じるさま。はかなく、また、さびしく思われるさま。「夕暮れは、なんとなく―に思われてしかたがない」
3 しみじみと心を打つ風情があるさま。趣があるさま。
「滝の音、水の声―に聞こゆる所なり」〈宇津保・忠こそ〉
4 しみじみと心に染みて愛着を感じるさま。いとしいさま。かわいいさま。
「なま心なく若やかなるけはひも―なれば」〈源・空蝉〉
5 しみじみとした愛情があるさま。優しいさま。
「見る人も、いと―に忘るまじきさまにのみ語らふめれど」〈かげろふ・上〉
6 感服させられるさま。感心だ。殊勝だ。
「―なるもの、孝 (けう) ある人の子」〈枕・二九〉
7 尊く、ありがたいさま。
「霊山 (りゃうぜん) は釈迦仏の御すみかなるが―なるなり」〈枕・二〇八〉
2 願望の気持ちを表す。ぜひとも。
「―、よい所もあれかし」〈虎寛狂・今参〉
3 囃子詞 (はやしことば) として用いる。
「いで我が駒早く行きこせ待乳山 (まつちやま) ―待乳山」〈催馬楽・我が駒〉
出典:青空文庫
・・・「哀れっぽい声を出したって駄目だよ。また君、金のことだろう?」「・・・ 芥川竜之介「海のほとり」
・・・赤坊は力のない哀れな声で泣きつづけた。仁右衛門は腸をむしられるよ・・・ 有島武郎「カインの末裔」
・・・、抱く手の濡れるほど哀れ冷汗びっしょりで、身を揉んで逃げようとす・・・ 泉鏡花「政談十二社」