出典:青空文庫
・・・業平の朝臣、実方の朝臣、――皆大同小異ではないか? ああ云う都人もおれのように、東や陸奥へ下った事は、思いのほか楽しい旅だったかも知れぬ。」「しかし実方の朝臣などは、御隠れになった後でさえ、都恋しさの一念から、台盤所の雀になったと、云い・・・ 芥川竜之介 「俊寛」
・・・近代の芸術家は、誰しも一度は、そんな姿と大同小異の影像を、こっそりあこがれた事がある。実に滑稽です。大工のせがれがショパンにあこがれ、だんだん横に太るばかりで、脚気を病み、顔は蟹の甲羅の如く真四角、髪の毛は、海の風に靡かすどころか、頭のてっ・・・ 太宰治 「風の便り」
・・・それはあとから説明するとして、二句の内容は、二句共に大同小異である事は、誰も疑わぬほどに明かでありましょう。だから思想から見ると双方共に同様と見ても差支ないとします。思想が同様であるにも関わらず、この二句を読んで得る感じには大変な違がありま・・・ 夏目漱石 「文芸の哲学的基礎」
・・・一、本書はもっぱら中津旧藩士の情態を記したるものなれども、諸藩共に必ず大同小異に過ぎず。或は上士と下士との軋轢あらざれば、士族と平民との間に敵意ありて、いかなる旧藩地にても、士民共に利害栄辱を與にして、公共のためを謀る者あるを聞かず。故・・・ 福沢諭吉 「旧藩情」
・・・その法は東京・大坂に行わるるものと大同小異。毎校生徒の数、男女百人より二百人、その費用はまったく官より出ず。中学校の内、英学女工場と唱るものあり。英国の教師夫婦を雇い、夫は男子を集めて英語を授け、婦人は児女をあずかりて、英語の外にかねてまた・・・ 福沢諭吉 「京都学校の記」
・・・会の群集を始末するには政府なかるべからざるが故に、政府と人民との関係を生じ、その仕組みには君臣の分を定むるもあり、あるいは君臣の名なきもあれども、つまり治むる者と治めらるる者との関係にして、その意味は大同小異のみ。斯く広き社会の中に居て、一・・・ 福沢諭吉 「日本男子論」
・・・課長と大同小異の説明をした。もし、書くもののどういうところが困るとわかれば、それらについてうちあわせてもよいと、中野重治がいった。「いや、別に、どういう箇所がいけないという具体的なものでもないんでしょうが……ともかく、もうすでに、ある方・・・ 宮本百合子 「ある回想から」
・・・そして、その職業の歴史的な内容からおのずと生じている感情の角度においても、大同小異と云えよう。そうだとすれば、職業からもたらされる感情の傾き、その波一般では、地方土着の文学の素質を決定するものとならない。 単に郷土的意味で、そこから一人・・・ 宮本百合子 「文学と地方性」