出典:青空文庫
・・・かも明治の初年日本の人々が皆感激の高調に上って、解脱又解脱、狂気のごとく自己を擲ったごとく、我々の世界もいつか王者その冠を投出し、富豪その金庫を投出し、戦士その剣を投出し、智愚強弱一切の差別を忘れて、青天白日の下に抱擁握手抃舞する刹那は来ぬ・・・ 徳冨蘆花 「謀叛論(草稿)」
・・・も、形式の整ったものでも、放縦にしてまとまらぬうちに面白味のあるものでも、精緻を極めたものでも、一気に呵成したものでも、神秘的なものでも、写実的なものでも、朧のなかに影を認めるような糢糊たるものでも、青天白日の下に掌をさすがごとき明暸なもの・・・ 夏目漱石 「作物の批評」
・・・たとえば、かの裸体画が公々然と青天白日の下に曝されるようなものであります。一般社会の風紀から云うと裸体と云うものは、見苦しい不体裁であります。西洋人が何と云おうと、そうに違ありません。私が保証します。しかしながら、人体の感覚美をあらわすため・・・ 夏目漱石 「文芸の哲学的基礎」
・・・之を喩えば青天白日、人に物を盗まれて、証拠既に充分なるに、盗賊を捕えて詮議せんとすれば則ち貪慾の二字を持出し、貪慾の心は努ゆめゆめ発す可らず、物を盗む人あらば言語を雅にして之を止む可し、怒り怨む可らず、尚お其盗人が物を返さずして怒ることあら・・・ 福沢諭吉 「女大学評論」