出典:青空文庫
・・・表面は円転滑脱の八方美人らしく見えて、その実椿岳は容易に人に下るを好まない傲岸不屈の利かん坊であった。十 椿岳の畸行作さんの家内太夫入門・東京で初めてのピヤノ弾奏者・椿岳名誉の琵琶・山門生活とお堂守・浅草の畸人の一群・椿・・・ 内田魯庵 「淡島椿岳」
・・・僕の八方美人を憎んでいる。ああ、わかった。Kは、僕の強さを信じている。僕の才を買いかぶっている。そうして、僕の努力を、ひとしれぬ馬鹿な努力を、ごぞんじないのだ。らっきょうの皮を、むいてむいて、しんまでむいて、何もない。きっとある、何かある、・・・ 太宰治 「秋風記」
・・・あんまり人なつっこいあんまり八方美人に芸術はなりかかって居る。 犯しがたい威厳のあるツンとした女王の様な態度を芸術はもって居なければならない。オッチョコチョイにそれを大切にする人の群はそのひろい陰に欠点をかくし見っともないところをかくし・・・ 宮本百合子 「無題(二)」